鉛筆画

海外でロケのコーディネーターをやっている女性に聞いた不思議な話。
そんなに怖くはない。

十数人のロケ隊がホテルに到着し、適当に各部屋に割り振って、10分後にロビーに集合して食事に出かけることになり、みんな荷物を自分の部屋に置きに行った。

で、彼女だけロビーに残ってフロントで両替をしていたら、ディレクターが血相を変えて戻ってきて、「部屋割りを決めたのは君か? なぜ俺をあの部屋にした?」と詰め寄ってくる。

何のことかわからず、適当に決めただけだ、と答えると、「じゃあこれを見てくれ」と彼の部屋に案内された。

部屋を見回してみたが、これといっておかしなところは見当たらない。
ただ、窓際の壁に鉛筆画のようなシンプルな絵の額縁が掛かっている。

ディレクターは「あの絵をよーく見てくれ。それからこの絵だ」といって、自分の鞄からラフスケッチのような絵を数枚取り出した。

それは、撮影に入る前にスタッフとの打ち合わせを行う際、ディレクターが見せるつもりで自分で描いた絵コンテ(事前に描く撮影予想図のようなもの)で、壁に掛かっている風景画はその中の1枚とほとんど寸分違わぬ絵だった。

打ち合わせはこれから行うところだったので、ディレクター以外にその絵コンテを見た人間はいないし、彼がその部屋に入ったのも全くの偶然なのだが・・・。

ホテル・旅館・民宿にまつわる怖い話

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする