赤継沼

私はバイクが趣味でよく暇が出来れば直ぐにでも何処かへ旅立ってしまう。
今回も東北方面へバイクで走っている時の事だった。

ちょうど夕方になり雲行きも怪しく徐々に暗くなり始めたので近くでテントを張れるような場所を探していた。

いつも旅する時はテントを持ち歩き景色の良い場所で写真を撮ったりするので、少しでも景色が良い場所と思い彷徨うっていると池?の様な場所があった。
周りにはあまり草も生えておらずテントも張れそうだったので、その場所で一夜をあかそうかと考えた。

近くに行くと古ぼけた看板だけ立っており薄汚く「あか?まぬま」と書いてあった。
(?の部分は経年や汚れで良く読めなかった。)
そうこうしている内にポツポツと雨も降り始めたので早急にテントの準備を始めた。

夜になり食事もとり終えた頃には雨も止み趣味の写真撮影をした。
ぬま?は思ったよりも綺麗で良い写真が撮れたと自分でも思い満足して、その日は就寝する事にした。

疲れも有り確か21時ぐらいには寝ていたと思う。
その晩、どこかで話し声の様な鳴き声の様な不思議な音がして目が覚めた。
時間を確認すると大体深夜の1時ぐらいだったかな?
何処で聞こえてるのか分からず音に集中していると何となくだけど沼の真ん中辺りから音が聞こえてくる。

最初は微かだけど徐々に音も大きくなって近づいて来ている様に感じる。
ちゃぷちゃぷと音が此方に向かって来るにつれ音の正体が赤ちゃんの鳴き声に似ている事に気づき鳥肌がたった。

次第に音はちゃぷちゃぷからざばざばへと変わり確実にテントの方へ近づいてきている。
音がテントに近くまで来た頃には完全に目も覚め、全く動けなくなっていた。
水の音が止み、這いずる様な音が変わりに聞こえて来た時は恐怖でどうしていいか分からなくなっていた。

「それ」はテントの回りを一定の間隔で「ズリっズリっ」と這い鳴き声も止まず気が狂いそうになった時にピタっと音が止んだ。
誰も居ないと感じ去ったのかと思った瞬間、テントの入り口の下の隙間からそれが覗いているのに気づき悲鳴を上げた。

人の様な感じなんだけどドロドロしてて得体の知れない物体と目が合い気絶してしまった。
その後、寒さで起きるとすっかり朝になっており夜中に見た得体の知れない物体は居なくなっていた。

恐怖もあり、早くその場を去りたかったのでテントを急いで畳もうとした時にテントの下の方に無数の手形がついて居るのに気づきゾッとした。
泥の様な物でべっとりと着いていて気味が悪くテントはその場に捨ててしまった。
そのまま旅行する気分にもなれず帰路についた。

しばらくした頃にあの物体がなんなのか気になり調べた所、気になる文面を発見した。
なんでも昔にその地方では若い女性の身売りが多々あり、欠食児童が続出してたらしく育てられない子供を夜な夜な沼へ遺棄していたらしい。
その沼の俗称が「赤継沼」と言い自分で育てられ無い子供を誰かに継いで欲しい母親の願いが表されているとの事だった。

今思えば沼の名前は読みにくかったけど「あかままぬま」では無いかと思う。
私のテントの周りを這っていた「それ」は丁度、赤子ぐらいの大きさで母親を探して居たのでは無いかと考えると少し悲しい気分になってしまった。

今、私は結婚してお腹の子供も大きくなるにつれ悪阻が酷いのだけれども最近何故か吐いたものにヘドロの様な匂いがしたり草みたいな物が混じってたりする。
もしかすると沼で赤子を継いでしまったのかも知れないと思う生まれてくる子供がどうしても不気味に感じてしまう。

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?343

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