私が父から聞いた海にまつわる怖い話を一つ。
1960年代、北海道日本海沿岸の漁村に生まれた私の父は、漁師の子供として当然のごとく小学校高学年の頃から、休日や長期休暇の時分にはイカ釣り漁船に乗って働いていました。
イカ釣りは夜に行われるのですが、この頃の漁師は暗黒の海に落水するより怖いものがあったそうです。
それは波間に見え隠れする、機雷です。
父が言うには、潮の干潮によって海面近く現れた機雷が漁船の漁り火にきらりと光る時などは、思わず手練の漁師でも網を持つ手が震え、仲間の船が機雷に引っかかって木っ端微塵に吹っ飛んだときなどは、イカや燃え上がる漁網、船や漁師の残骸が海の夜闇に赤い光の糸を引いて飛び散り、周囲の漁船の甲板や漁師を打つ阿鼻叫喚の地獄となったそうです。
以上、冷戦という母胎が産み落とした海にまつわる怖い話の一つでした。
海にまつわる怖い話・不思議な話2
コメント
いや、コレは現実なだけに本当に怖い話ですね。
冷静でわかりやすい文体が、そこはかとなくその恐怖を伝えて、とても貴重な話だと感じました。
年代がキチンと書いてあるので、資料として重要です。