秘密基地にいた女

始まりは小4の頃で、当時住んでいた場所はド田舎ってわけでもなくて都会ってわけでもなくて、でもB山って言うおっきい山がありました。
その山中は整理されてるところはきちんされていて、手のつけられていないところは全く手がつけられてなくて。

なぜか大きい神社や小さい神社が、やたらぽつぽつと道路から見える感じの山でした。
毎年元旦には人で握合う大きな神社もあったら、草木嗅ぎ分けて、こんなとこに石造りの階段がある、って気づいて登ってみればぼろぼろの神社があったり。

で、その山なんですけど、頂上付近に、廃墟があったんです。
小学生当時の僕はいつもよく遊んでいる友達、俺含めて5人で、よくその山を探検してたんですが、その時に偶然見つけた廃墟です。
で、そんなものを見つけたとなったら当時の僕たちが考えることはみんな同じで、

「ここに秘密基地作ろう」

僕の友達のA君がそう言いました。
で、廃墟の中の一室を勝手に私物化。
懐中電灯持っていて電灯代わりにしたり、みんなで漫画持ち込んだり、お菓子持ち込んだり、ひっそりと見つけてきたエロ本みんなで共有したり。

そんな僕らだけの秘密基地ができて、放課後はそこに集まったりする、なんて生活が最初はとても楽しかったんですが、日に日に、その秘密基地に行く回数が減っていきました。

で、かなり時間が飛ぶんですが、中1に上がった頃。僕ら5人は未だに一緒に遊んでいて、ふと、いつものように遊んでいる時に、あの秘密基地、今どうなってるんだろう、って話になりました。
で、放課後向かうと、そこには、あんまり変わりのない僕らの秘密基地。

ドア開けて中に入ると、かなり汚れていて、放置しっぱなしだった筈のお菓子や漫画が持ち去られていたり。
ホームレスの仕業だろうと思って、その辺りは諦めて、久々の秘密基地、って感覚をみんなで満喫しました。

で、ある1人の提案により、今度みんなの都合が合う日、この秘密基地で一晩明かしてみないか、って話になったんです。
一晩を実家以外で、それも秘密基地で過ごす、って感覚に、当時の僕はとてもわくわくしました。
でも、後になって、今になっても、行かなきゃよかった、って僕は思います。。。

お泊り当日の日。僕は家族に友達の家に泊まりに行く、と秘密基地で一晩明かすことを隠して、家を出ました。
待ち合わせ時間に、秘密基地がある山の麓へ。
そこにはA君の姿だけがありました。
他のみんなの姿はありません。

「お前だけ? 他のみんなはまだ?」

ってその時言ったような気がします。
そしたら、クラスでもお金持ちのぼんぼんで有名なA君が、当時もう持ってるだけで注目の的になった携帯をわざと見せつけるようにぽちぽちしながら、

「Bは風邪、Cは親に怒られたから、Dはなんかようわからん、でも来れないって」

そんな感じのことを言いました。
この時Dが何で来れないかちゃんと理由があった気がしますけど、ちょっと忘れちゃいました。。。

まぁとりあえず俺らだけでちょっと行ってみるか、ってことになり、秘密基地へ出発。
で、到着。その瞬間から、明らかにおかしい。

廃墟の一室を僕らは秘密基地として使っていたんですが、その一室は、ドアがあって、その両側にすりガラスの窓があったんです。
他の部屋のガラスとかはばりばり割られていて、僕らは比較的損傷の少ないその部屋を選んだんですが・・・部屋の中の、懐中電灯がオンになっているんです。

誰かきたのかな? って思いました。
でも、それを見つけた時、当時、物凄くゾッとしたのを覚えています。
すりガラスの向こうに、明らかに人影が見えるんです。
ゆらゆら、うっすら赤い影が揺れてたんです。

中に誰かいる。
大人の人だ。
そう思って、なんか僕は怖くなって、帰ろう、って言ったのを覚えてます。

「いやいや、誰かいるみたいだけど……勝手に俺らの秘密基地使ってんじゃねーよ!!」

A君はどっちかって言うとちょっとDQNっぽくて、喧嘩っ早い性格の子でした。
何の物怖じもせず、扉を思い切り開けて、中へずかずかと侵入。
僕は怖くて彼の背中を見つめてたんですが。

部屋の中に、暗い赤色の服を来た髪の長い女性が、体をゆらゆら揺らして、そこにいました。
これはヤバい。子供ながらにそう感じて、Aにヤバいから逃げよう、と告げようとするも、震えて声が出なかったのをよく覚えてます。
「お前俺らの秘密基地で何してんの!?」

ああもう止めてくれ、ってこの時程A君の勇気を呪ったことはありません。
A君はそれを見て全く怖気付かずに、むしろ近くにあった箒を手に取り、向かっていったんです。

そこで、僕は鼻をすするような音に気づきました。
ひっ。ひっ。ひっく。って感じです。
泣いてる? って、そんな気がしました。

その時、ふと冷静になって、ああ、もしかしたらこの人、家を追い出されて、ここへ来て泣いているのかな、って思いました。
でも違いました。

A君が何やら罵倒しつつ、女性を箒で突っつき回しています。
女性はしきりにひっ。ひっ。って言いながらゆらゆら揺れていて。
そして突然。ひひひひひひひひひひって感じで。大声で笑い出したんです。
僕はもう腰が抜けてしまいそうになって、さすがのA君も驚いたのか、僕に逃げるぞ! って言って、手をひいてその場を駆けて後にしました。

ほんとに怖かったのは、後ろから笑い声が追いかけてくることです。
僕らは振り返ったりせず、一目散に走りました。
今思えば、本気であの女性が走ってきていたら、僕らは捕まってたのかな、なんて思います。
追いかけてきてたかどうかも分からないけど、でも、廃墟を出て、山を降りるまで、ずっと声は後ろから続いてました。

声はいつしかしなくなっていて。
僕らはようやっと、麓まで降りることができました。もう心臓バクバクで、もう声はしないけど、でもまだ追いかけてきそうで怖くて、僕らは今日は帰ろう、ってことになりました。

さすがのA君も大人しくなって、その日は、二人とも、自宅へ帰ることに。
で、無事自宅についたんですが、僕は今日のことを来なかったみんなに伝えておこうと思って、僕の部屋にある子機から電話をかけることにしたんです。

まずはB君。電話をかけて、起こった全てのことを話すと、ふーん……と何やら明らかに信じてない感じでした。

「お前、今テレビか何か見てる?」

って聞かれました。
いや、見てない、と答える僕。
で、次にB君が放った一言で、僕はもう恐怖から声を荒げて、すぐさま電話を切ったのを覚えてます。B君は、

「なんかすげー笑い声聞こえてうるさいんだけど。テレビの音じゃないの?」

って。もちろんテレビも、音楽も、なにもつけてなかったです。
僕は怖くなって、早めに寝ることにしました。

ここから、僕自身には何の恐怖も降りかからなかったんですが・・・更に、奇妙なことが起き始めます。
ある日、母親からこんなことを言われました。

「最近夜中に不審者がうろついているみたいだから、友達と夜に出かけるのは止めておきなさい」

って。何があったのかを聞くと、毎晩毎晩、色んな家々のガレージから、笑い声が響くらしいんです。
今日は誰々さんの家、今日は誰々さんの家。
一夜ごとにガレージを移動して、毎晩、そこで誰かが、笑っているらしいんです。

もしかしたら、と思いました。
でも、その時家族には、あの秘密基地のことを話しませんでした。

そして近所中で、深夜の笑い声現象が定着していく中、一つの新しい噂が広がり始めました。このことは、後になって知ったんですが、

「最近の笑い声は、いつも~さんの家のガレージから聞こえる」
「あの人の家、気味が悪い」
「深夜に赤い服を来た誰かが、色んな家のインターフォンを鳴らしまくる」
「その赤い服を来た奴は、~さんのガレージからはい出てくる」

って言う感じの噂だったらしいです。
その~さんの家のガレージ、ってのが僕ん家だったわけで。
どんなやり取りがあったのか、僕らはその家を引っ越すことになりました。
その引っ越した理由も、新しい噂と一緒に後になって知ったんですが、近所中の弾圧みたいな感じで、半ばその地域から出てけ! とか、嫌がらせの類が自宅に頻発していたようで、追い出されるような感じの引越しだった、と言うことらしいです。

今現在22才なんですが、もう引越しを8度も経験しています。
そのほとんどが、近所中から気味悪がられて、いる場所がなくなって、また新しい場所へ引っ越す、みたいな感じです。

そんな引越しばかりしなくても、除霊とか、そう言うのを一回してもらったらどうだ、と提案したこともあるのですが、うちの両親はそう言う類のものを信じてなくて。
でも近所の目がひどくなったら引っ越す、なんて感じのことを、今まで続けています。

今の地域でも、~さんの家の前に、赤い服を来た人がずっと立っていた、とか、笑い声がうるさい、とか、そんな噂が絶えません。
ただ何より一番怖いのは、そんな現象を、家族も近所の人たちも声を揃えて語るのに、僕自身が、一度も遭遇していないこと、なんです。

もしかしたらあの秘密基地で会った赤い服の女は、ホームレスなんかじゃなくて、本物の幽霊だったんじゃないかと。
それが僕について来てしまったんじゃないかと。
秘密基地での一件以来、そう言う出来事が起きたので、やっぱり関係してるんじゃないかな、って思います。

僕の兄妹、両親、近所のおじいちゃんおばあちゃん、みな一度は、笑い声やその赤い服の姿を見たと言います。
でも僕に対してそんな現象が一切ないのが、逆に怖いです。

実話恐怖体験談!19

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