部位箱

唐突だけど、俺、箱が怖い。

大きい、小さい関係なく怖い。
蓋が開いて中身が見えてればまだいいけど、蓋が閉まっているともうだめ。
恐怖で身がすくむ。
俺が、中学の時の経験が原因。

母方の祖母の家に、大きな蔵があった。
土蔵ってやつ。
子どもにとっては宝の山じゃん?
夏休みとか、両親と帰省すると一つ下の弟と必ず探検をしに入った。
古い鎧とか、刃を潰した日本刀とか、訳のわからん農機具とか、色々面白いものがわんさか。

その日は、弟は両親と祖母と買い物に出かけ、俺は一人で土蔵で宝捜しをしていた。
弟の面倒をみなくて良いので、俺はいつもは行かない奥へと向かっていった。

人の形をした木の板とか、妙な刺の一杯ついた麻袋とか、何かいやな雰囲気の物が所狭しと置いてある。
ちょっと薄気味悪くなった俺は、軽く物色すると、戻ろうと振り返った。

「それ」は、古びた箪笥の上に置いてあった。
箪笥の上の、これまた古びた神棚?のような物の上。
綺麗な蒔絵の施された、15センチ四方くらいの箱。
小汚い土蔵には不釣合いな程きれいな箱。
俺は吸い寄せられるようにその箱を手にとった。

見ると、真ん中あたりから開く作りだった。
ドラクエの宝箱のような感じ。
俺はドキドキしながら、そーっと蓋を開けてみた。

・・・拍子抜け。
箱の中には一回り小さな同じ箱が入っていた。
ふざけるなよ、と思いながらその箱も開けてみる。
半ば予想していたが、さらに小さな箱。
まるでマトリョーシカだ。

箱の中に箱、箱、箱・・・
開け進むうちに、箱の底に何か字がかいてあるのに気がついた。

「爪」「歯」「耳」「鼻」「腎」・・・

見ると、全ての箱に体の一部の名称が書いてある。
薄ら寒くなりながらも、今更止めるのは癪に障る。
俺はむきになって開け続けた。

「肺」「膵」「脾」「髪」・・・

いよいよ最後の箱となった。
1センチ弱の小さな箱。
表には親切にも「終」とかいてある。
裏を見ると「頭蓋」と書いてあった。
俺は期待と恐れを感じながら、
そーっと箱を開けた。

中には小さく折畳まれた紙切れが1枚。
またまた落胆を感じながら、広げてみる。

「以上の品々、近日中に貰ひ受けに参りはべり。」

それから2ヶ月後、弟が死んだ。
中学から帰り道で行方不明だ。
行方不明なのに、なぜ死んだと分かったか?
通学路に落ちていたんだ。
弟の脳みそが。
他の部分は見つかっていない。

俺は、弟の腦が見つかったとき、両親やほかの人よりも怯えていた。
あの箱に。「腦」の文字だけが無かったのを思い出したからだった。

お前らも不用意に箱は開けるな。

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?279

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