面白い写真

昨日まで母親の実家行ってて今日帰ってきたんだが、そこでよくわからない物を見た。
ちなみに母親の実家はとある県の離島。

実家には何回も行ってるから、やることもなくて家でゴロゴロしてたんだけど。
よっぽど俺が暇そうにしてたからか、「面白い写真がある」って母親が自分のアルバムを見せてくれた。

高校時代の母親とその友達、そして二人の中年のおじさんが並んで写ってる写真。
四人の後ろには舗装されてないあぜ道があって、あぜ道から十メートルくらい向こうには崖。崖の先は海になっている。
母親と友達はスポーツウェアを着ていて、おじさん二人はジャンパーを着ていた。

ぱっと見た雰囲気、「親戚のおじさんに連れられて友達と一緒に遠出した写真」みたいな感じ。
正直、どこが「面白い写真」なのかわからなくて、で、母親に訊いてみたら、大して驚かす風でもなく「これ、心霊写真」って言われた。
なんかあっさりと言われたからあまり怖くなかったけど。

一応、心霊写真って初めてだから、とりあえずどこかに妙なものが写ってるか確認してみた。
肩に手とか。空中に顔とか。あとは体の一部分が消えてるとか。
なのに、色々探してみたけど不審なものはない。

どこが心霊写真だ、と思って母親もそう尋ねてみたら、
「高校二年生の頃、友達と三人で島をサイクリングしてね。その時に撮った写真」
とか言われて、最初「?」って状態になったんだけど、でもすぐその意味がわかって余計に混乱した。

つまり、三人でサイクリングに行って、一人がカメラで二人を撮ったってことだけど、それじゃあ「この二人のおじさん誰?」ってことになる。

くわしく母親に訊いてみたら、その写真を撮った場所は俺も知ってるところだった。
少し前にドラマでやってた「ドクターコトー診療所」あったの覚えてる人いるかな? あのOPの風景に近い。
海側の崖に沿うにあぜ道が長く続いてて、近くに民家はおろか、建物もない草原のような場所。
車が通るのも三時間に一台とかそのレベル。

心霊写真の科学的根拠って、大抵は光の加減や近くにいる人が反射して写ったとか、まあそんなものだよな?
でも、母親によると写した時、周りには男の人どころか見渡す限り三人以外誰もいなかったらしい。
遮蔽物になるものなんてない、見晴らしのいい場所だから、何キロメートルって範囲で誰もいなかってことだと思う。

となると、少なくても「近くに居た誰か」が写ったっていうことではない。
また、光の加減にしてはあまりにハッキリハッキリと写りすぎている。
透けてもいないし。
体の一部が歪んでいるわけでもない。
本当に普通の人間に見えた。
事実、俺は母親に言われるまでそれを「四人」の写真と思っていた。

テレビとかの写っているように見える心霊写真じゃなくて、本当に人物として写っている心霊写真は初めてだった。
どのように写ったかが現実的に説明できない心霊写真も。

勿論、俺の母親が嘘をついていたらという可能性はある。
四人で撮った写真を二人で撮ったと言えばいいだけなのだから。
でも、今までこの手のオカルト染みた嘘をうちの母親がしたことは一度もないし、嘘にしても内容が杜撰すぎる。

それに今思えば、気になることもあるのだ。
母親と友達は真っ直ぐカメラを見てるのに。
男二人の目はカメラを捉えておらずに、カメラより斜め上を二人揃って凝視していた。
さっきも言ったとおり、周囲はだたっ広くて、中空に見る物なんてない。
ならば男二人は何を見ていたのか?

ほんの数日前のことだが、今でもあの写真は何だったのかと思う。

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?237

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