入り口がない家屋

大学時代友人が体験した話

友人は農学部で生物関連の色々なバイトなんかを受けてたまに俺もつき合わされていた。
動物調査や、標本採集はきついだけあって結構実入りがいいのでよく受けていた。

言葉だけ聞くと楽そうに思えるのだが、実際は山の中を延々と歩いて規定数の生物をクリアしないといけないのでかなりきつい。
そんなバイト中の友人が体験をここ最近のニュースを見て思い出したので書いてみる。

その日、友人はコウモリの固体調査を請け負ってバイト仲間と奈良の山中を回っていたらしい。
奈良山中は廃村が結構あってそこがコウモリの巣となっている、その分布を調べる仕事だそうだ。

いくつか村を回って、赤坂の廃鉱の村を調査していた時、入り口がない変わった家屋があって中を調べてみようという話になったらしい。
その家は古い日本家屋で何故か全面塗り壁で覆われていて、窓もなかったそうだ。

住民が村を離れる時に、扉を塗りつぶしたのだろうと思ったと友人は話していた。
薄い壁を壊して友人達が入ると、驚いたことに、人がいた。
8畳くらいの板の間で真ん中に寄り添うような形で子供が6人座っていたそうだ。

不思議と恐怖感はなかったらしい。
そばによって話しかけていても俯いて黙るばかりで、最初は人形かと思ったという。
スーパーで売ってるようなTシャツを着ていて、髪はボブくらい、薄暗い部屋なので性別は分からなかったという。

なんどか声をかけていたら、「どこから入ってきたの」という質問に対して部屋の奥を指差した。
子供をおいて行くの気が進まなかったが、友人はここを調べることに決めて仲間と奥に向かったそうだ。

奥は暗く懐中電灯を使って進むと玄関らしき場所に出た、引き戸を引いてみるが当然塗り固められているので開かない。
色々調べてみたら、土間に最近のものらしい複数の大人の足跡を見つけたそうだ。
子供達は大人が連れてきて閉じ込めたことになる。

友人達はこれは何かまずいのではと思い、あわてて先ほどの部屋に引き返したそうだ。
だがそこには誰もいなかった。
自分達があけた穴から出たのかと思い、外も探してみたらしいがどこにもいなかったそうだ。

バイト仲間がもう一度、中を探してみようと言ったのだが「あれは生きた人間だったと思うか?」とたずねたら、もう何も言わなくなったそうだ。 
結局中を調べることはせず、友人達は帰ったそうだ。

最近摂理や北なんかのニュースを見ていて、この話を思い出した。
やっぱり友人が見たのは生きた人間なんじゃないだろうか。

山にまつわる怖い話28

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