埋蔵金掘り

聞いた話です。

祖父から聞いた話です。
私の祖父は昔の国鉄に勤めており、車掌をしていたこともあります。
ある年の冬、大雪が降り祖父の乗る汽車が雪崩で立ち往生したことがあります。

普段であれば乗客に遅延の理由を説明したり、遅延証明を書いたりと忙しいのですが、そのときは夜汽車だったので乗客はおらず、祖父は車掌室で暇を潰していたそうです。
それにも飽きたので「今のうちに掃除とかしとくか」と思った祖父は客車に行き、忘れ物のチェックなどをしていました。

座席の下、網棚などを見て回っていると、網棚の隅に箱がありました。
紐で縛ってあり、開かないようになっています。
「ん、忘れ物かな?」と思い、箱を持って運転手の所へ行こうとしたとき、後ろから「あの・・・」と声をかけられました。

「はい?」と振り返ると30くらいの着物を着た男性がいました。
「それ、私の忘れ物なんです。すみません、ご迷惑をおかけしました。」
「ああ、いえ、どうぞ・・」と驚いていた祖父が渡すと「ありがとうございます。」男性は箱を受け取ると降りて行きました。
「怪しいな・・・」と思った祖父も汽車を降りて男性を探しました。

駅員に「着物の男を見なかった?」と聞いても「見ていない」との答えしか返って来ません。「変だな」と思ったそうですが、「地元の人なんだろうか?」と思った祖父は探すのを止めて汽車に戻りました。

翌朝、線路が復旧するまで時間がかかるとの事だったので、祖父は村へ食事に行きました。
ある食堂に入ろうとしたら張り紙がありました。
「尋ね人」と書いてあり、その下には特徴と似顔絵がありました。
失踪したのは去年、山に埋蔵金を掘りに行くと言い行方不明。
その似顔絵は昨晩、汽車にいた男性、そのものだったそうです。

食堂に入り、女将さんにその事を言うと
「ああ、駅裏の山に入ったままでね。なんでも、山賊が金を埋めたとか
って話があってね。それを探しに行ったままなんだよ。地元の人間は
入ろうともしないけどさ。」

「なんで入らないんですか?お宝があるかもって話なのに?」
「あの山はね、神隠しに遭うんだよ。あの男は町から来たから知らなかったのかも知れないけど、処刑された山賊の祟りとか、昔、合戦があったとか。あまりいい話がないしねえ。」
「じゃあ、あの男性は一体?」
「神隠しにあっても、お宝を探してるんじゃないかい?欲は怖いねえ。」

女将さんはそう言うと、「厄払いだ」と言って祖父に熱燗を振舞ったそうです。

山にまつわる怖い話36

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