違った

厨房時代、自転車で塾から帰る途中(夜の10時頃)近所に山口なんとか言う偉い人の記念公園があるんだけど、そこの前を通ったらこんな時間なのに誰かいる。
砂場のところで変なおじさん(30過ぎくらいでワイシャツにネクタイ、と言うサラリーマン風)が向こう向いてうずくまってた。

何か気になって、誰かに襲われでもして(約10年前のオヤジ狩り全盛期だったから)怪我でもしたのかと思い、近づいて声を掛けようとしたらそのおじさん俯いて
「違うんだ違うんだこれじゃないんだ・・・」
って呟きながら変なボロボロの布みたいな物に、一心不乱にカッターナイフ何回もザクザクザク・・・と。

うわっ、危ない人だ、と思って逃げようとしたら呼び止められて「なあ・・・これじゃないよな?違うよな?」って訊かれた。
そこでおじさんの顔初めて正面から見たけどどう見ても危ない人。

眼鏡の右のレンズが人って字みたいにひび入ってて、その向こうの目は何というか、落ち窪んでるって言い方がぴったりな感じの、クマがパンダみたいに目の回り全体に広がってて瞳孔も開いて見えた。
しかも目はそんな凶悪そうなのに口にはにやにやした笑いが浮かんでいる。
「わ、解りません!」って叫んで逃げた。

次の日、学校の帰りに公園に行ってみると小学生らしい女の子がブランコの近くの地面に穴掘って何かを埋めてた。
「どうしたの?」って訊くと「猫が死んじゃってたからお墓作ったの」って。

あの時おじさんがザクザクしたの猫だったらしい。
逃げなかったら私も切り刻まれてたかもとぞっとした。
何が「違った」んだろう・・・

ほんのりと怖い話24

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