猫を使った儀式

話下手なので恐怖感を煽る表現なんかはうまくできないので、もしかしたら全然怖くないのかも。
ただ自分にとっては物凄い恐怖体験でした。
どうか長文がだるい方はスルーして下さい。

去年の事、高知県の赤岡という町に行った。
絵金祭りという祭りを一度この目で見てみたかったというのが第一の理由。
絵金祭りというのは祭りの夜にろうそくの火で絵金の描いたを見て回れるという祭り。
第二の理由と言うのは、まぁオカ板住人なだけにオカルト的な事が好きな自身を満足させるような事があると言うこと。

率直な話自分は差別と言うのは好きではない。ただ部落の話は好きなのだ。
部落の話と言っても、そこにある昔からの伝承や、昔から守られてきた風習の謎とも言うべき物の知識を得ることが快感だったのかもしれない。
そもそも日本には色々な風習があるが、不思議と狭い社会で作られたディープな話程興味をそそるというもの。それに触れるのは部落関連の話というのが自分なりの安易な解答だったのだ。

「赤岡の町には部落があり、何か祀りたてている。」
こんな話を聞いたのが事の発端だった。
その土地の神聖な存在と言うのは概ね地元の神社、寺などを廻ると分かるのだ。
例えば神社に行き、神主さんに郷土史について調べていると言えば、少なからず話してくれる神主さんもいる。

埼玉に住んでいた自分には、ただ単純にそういった興味を満たすためだけにその遠い土地を訪れるのは少々の抵抗もあったのだが、赤岡という事で絵金を一度
見てみたいとかねてからの想いも後押しして、結局行くことにした。

赤岡と言う町は現在では高知市のすぐ側にあり、空港からもさほど遠いわけではない。埼玉でもかなり東京よりで割と発展した場所に住んでいた自分からすれば、という話になるが、そんな場所にも関わらず随分とさびれた町だったのを今も不気味ながらに鮮明に覚えている。

到着してから初めに向かったのは神社。
その神社は星神社と言い、なんとも変わった名前だし行って見たいという好奇心もそそられた。
知ってる人も多いと思うが「星」と「信仰」というのは物凄く濃い関係を持っており、それは日本に留まらない。
そんな事を考えながら到着した。

なんの変哲もない普通の神社だった。
それから自分の好奇心を満たす為、結局宿の近くで散策しようと向かった。
そこから車で随分と行った所に森という名の場所が何箇所も地図上にあり、なおかつ面白い名前だなと想いつつ、その森の方へと足を向けた。
「長者ヶ森」「平家ヶ森」「三辻森」である。

詳しい人は知ってると思うが、三辻という苗字がある。
その名前は非常に珍しい事もあるが、昔はとてつもなく位の高い苗字だった。
時の左大臣や右大臣もいた。果ては天皇家と言っても良いほどの家だ。
しかしある時反乱に加担し、島流しや地方送りになったのである。
その名に加えて平家ときたらもう大好きな次元の話になってくる。

そこにはもう一つの森があり、清水の名前が着くのだが長者と清水には深い繋がりも伺えると思う。
三辻→平家→長者→清水→加えて「熊王」「秋葉「龍河洞」ときたらもう大変である。
僕は今でも四国の詳しい郷土史は知らないし、そこに実際に平家や三辻が流れたかも分からない。
元々歴史には明るくないので。申し訳ない。

そういった妄想も膨らみつつ、宿の方へと向かった。
まず初めにしたのは聞き込み。
「平家」「三辻」「熊王」など色々な事を古い日本家屋へ行っては聞き込んだ。
大体の老人の話では、天皇家の血筋だとか平家の偉い人だかが四国に流れてきた。という事。
最後と言うべきか、寧ろ満たされた自分の好奇心が最後にしたのか、ともかく最後に訪れた家の方はこう話した。(方言の再現は不可能ですw)

爺「好きな人もおるんじゃのぉ」
婆「勉強の為だしいいかも知れませんね」
爺「私も昔の年寄りに聞いた話だけしか言えんけどいいか?」

そんな事を言われて「駄目です」などとは当然言えるわけもなく、「お願いします」と丁寧に頭を下げた。

爺は語る
「昔平家の落ち武者がある日猫を連れて落ちてきた。自分が言うにはとても偉いんだと言うこと。なんでも猫を使ってある儀式がしたいと言いだした。」

婆「不老不死じゃな。」

爺はそういう変な言い方するなと婆に言って舌打ちをしながらこちらに向きなおした。

続いて爺
「山やら森の名前で分かるかも知れんが昔は随分とそういう事が実験に近い形で行われてた。ワシのじじいの代でもそういう事があったと聞いておる。しかもその時使われていたのは人間、今では差別になるんだが、分かりやすく言えば部落じゃな。そういう土地柄を利用しつつやっていたと聞いておる」

僕は聞き返す
「人体実験のようなものですか?」

爺「昔はそういうこともあったという話だ。あんた間引きや姥捨てというのを知っとるか?」
静かに頷く自分の内心は『うひょひょひょ、キタキタキタキタキターーーー』という感じだった。
爺「そういう対象の人間が『使われた』んだな。しかし今でも猫に関しては神聖視する社会もある。あんた今日は絵金に行くのかね?」

僕はただ単純にうなずく作業を2,3度繰り返した。

爺「あの辺りには一部だが、いわゆる部落っつーもんがある。猫だけは決して殺してはいかんぞもし間違って何かの拍子に殺してしまったら、何も言わずにすぐ逃げなさい。今でも何かといい噂はない社会だから。年寄りの間でだけだがな。」

「わしが話せるのはこのぐらいかの。」とその話を締めた。

僕はそのお爺さんとお婆さんに深々と頭を下げてお礼を言いつつ、東京土産ですと東京ばななを渡して赤岡に向かった。
向かう途中に考えた。
実はあの爺さんは肝心の儀式については何も話してくれなかった。

方言だからかもしれないが、最後に「ワシが話せるのはこのぐらい」と言った。
それ以上は話せなかったのだろうか?
妄想が大好きな僕は監視なんかがあり話せないとか、近所の人に後で色々と言われるのが怖くてそこで止めたなど色々考えながら赤岡に向かった。

当然あんな話をされた後なので、赤岡での聞き込みはとてもじゃないが出来ず、おとなしく予約した宿に車を走らせた。
その夜、絵金は静かな祭りで皆がたまに見れる絵金を楽しみにしていたという表情がうっすらと蝋燭の火で灯され、皆が楽しんでいる様をまるで第三者のように見つめながら絵を楽しんだ。

祭りは終わり次の朝には宿を出た。
宿を出るときにはおかみさんが外まで見送ってくれた。
2,3定型文とも取れる会話をしつつ一路空港まで向かうことにした。

空港に向かう途中の話、旅館から出てまだ10分程度の場所。
広場のような場所で車を止めて道路の反対側にある自動販売機で地図を確認していた。
要は道に迷ってコーヒーを飲んでいたのである。
その辺りは細かい道がとても多く、空港方面に出る道路に出るためには少々遠回りをしなくてはいけなかった。

自動販売機の裏に森に向かってるベンチに腰掛け、コーヒーを飲みながら地図と格闘していると、ふと『キキーッ!』という車の緊急停車といった感じの音が聞こえてきた。
車はそのまますぐに発進した音がしたので、そのまま気にせず地図と睨めっこをしてたわけだ。

何事かと思い自動販売機から覗いてみると、10人近い男がごちゃごちゃ話している。
儀式をしないといけないとか、犯人を捕まえる意外に方法がないとか。
多分地域の住人だと思う。田舎のじじいを連想させるようなランニングとモモヒキのおっちゃんもいた。

嫌なことに僕が借りたレンタカーを入念にチェックしている。

「血がついとらん」
「あほ、血なんぞ出とらんわ!」
「凹みもないようだぞ?」
「この車じゃないのかも知れん」

もう僕は怖くなって怖くなって仕方がなかった。
ここで出て行ってあらぬ疑いを掛けられるのは嫌だ。
しかし出て行かなくて見つけられたら多分お終いだろうと思った。
結局僕は出て行くことにした。

僕「すいませーん、なんか車にありましたか?僕が借りたレンタカーなんですが?」

すると一人の男が前に出てこう言う。
「あんた猫轢いたか?というか何してんだ、こんなとこで」

僕は事実轢いてないので「いいえ。迷って地図を確認してただけですよ、自動販売機の裏のベンチで」と答えて笑顔を作る。
すると他の男が言う。
「こいつは他所もんだし関係ない、もしこいつでも仕方のないこっちゃ」
他の男が言う。

「そうだな…」
なにやら不穏な空気を感じつつ空港に方面へ出る道を聞いた。
「この辺りは入り組んでたり直線というわけにはいかんからそっちの大通りいけ」
結局この場は逃げられるようである。」

そして最後に他のじじい(多分一番年上)が寄ってくる。

「なんも聞いてないな?」
「な?」
「な?」
「な?」
「な?」
「な?」
「な?」
「な?」
「な?」
「な?」
「な?」
「な?」
……………… …… …

何度同じ一文字を聞き続けただろう。
返事をしようとしても制され、同じその一文字を繰り返す。
そして無言になったかと思えば「全員が無言でこっちをじっとみつめている」
目が冷たい。
初めて心の底からそう思った。
不気味に笑顔になっている人もいた。当然目は笑っていない。

僕は仕方なく
「はい…。」
と返事をしてその場を立ち去った。

あの土地で猫がどういう存在なのか、また差別的に言うとその部落ではどういう儀式があったのか色々果てぬ疑問は残りつつも今に至る。
誰か詳しい人がいたら教えて下さい。
怖くないかも知れませんが、僕にとっては本当に恐怖体験でした。

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?164

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