ノイズの唇

俺のばあちゃんの家はかなりの田舎にある。
というか、島。家から港まで車で6時間、そこから船で2時間かけないと行けない。
それでも、小学生のときとかは楽しみだった。
今ではただ遠いとしか感じなくなってしまったけど、夏と冬、1年に2回は行く。

向こうには、2つ年上のイトコの姉ちゃんがいて、よく2人で遊んでた。姉ちゃんは泥汚れとか全然気にせずに、森の中で遊んだり川に入ったりと、俺の面倒を見てくれていた。
大体、向こうには一週間ぐらい居た。

そんで、なぜかは忘れたけど、その日は一人で遊んでた。
今でも何でその日だけ一人だったのかは覚えていない。
まあいろいろ一人で何かして遊んでたと思う。
やがて夕方になり、日も落ちかけてくると周りはとても暗くなる。
そろそろ遊ぶのをやめて帰ろうと思ったら、小橋の近くにある電灯の下に姉ちゃんが居た。
後ろを向いて立ってて、電灯にもたれ掛かる様な感じで。

姉ちゃん迎えに来てくれたんだ~、と思って近づくと、そいつが振り向いた。
そいつのあまりの不気味さに足が一瞬で止まった。

なんつーか・・・目、鼻、口は福笑いみたいな、とってつけたような薄いパーツで、
皮膚が見たことも無いぐらいツルツルだった。
姉ちゃんと似ていたのは髪形だけで、あとは化け物以外の何でもなかった。

一番キモかったのは、唇。
ぎゅっと固く結ばれた唇が、ノイズみたいに不規則に折れ曲がりながら動いていた。

「MWMW」 ←分かりにくいけどこんな感じ。
そこからは考えよりも体が先に動いて、猛ダッシュ。
死に物狂いでばあちゃんの家まで走った。
家に着くと姉ちゃんがのんきにスイカ食ってた。
今さっきの事を話したら、

「そんなん知らんww」
「今日は隣の家の引っ越し手伝ってた」
「お前だけサボりやがってww」

みたいな事と言われてヘッドロックかけられた。
まあ、そんなことはそれ一回だけだったけど、今でも姉ちゃんと会ったら聞いたりする。
「あの日、本当にあの電柱の下には居なかった?」
って。
そのたびに「知らんww」って言われるけどね。

だって、忘れようにも忘れられないんだよ・・・あのノイズの唇が特に。

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?160

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