数年前、ヘリウムガスを入れた魚型の風船が流行っていた。
私はマンボウ型の風船を購入したが、特にそれで遊ぶ訳でなく、その辺に浮かしていた。
ある日、仕事から家に帰ってくると、母がこんな事を言った。
昼間、一階の居間にいたら階段をゆっくりと風船のマンボウが降りてきたのだという。
母がマンボウに「姉ちゃんは(私の事)は、まだ帰ってきてないよ」と言うと、マンボウはまたゆっくりと階段を上って行ったのだそうだ。
「性根があるようだったよ!」(生きているようだった、という意味らしい)
母は興奮気味に言ったが、風船に話しかけるあんたはいったいどうなんだ?
2階に上がると、マンボウは私の部屋で何事もなく浮いていた。
特に怪現象はなかった。
そして数日後、仕事から家に帰ってきた時母が言った。
「風船がおらんなったんよ」
なんのこっちゃ?と思ったが、聞いてみると、こんな話だった。
母と姪が一階の居間にいた時、またマンボウがゆっくりと階段を下りてきた。
そして居間を横切り、増築したベランダへの階段をゆっくりと上っていき、そのまま飛んでいったのだという。
母と姪が追いかけたが間に合わなかったという。
家にいた何かが、マンボウに乗って出て行ったのだろうか?
不可解な体験、謎な話~enigma~ 61