窓の外

これから書くお話は、実話と伝聞が混ざっています。
人物も場所も特定できるのですが、推察できる記述は伏せさせて頂きます。
なぜならば、私が働いている会社の話だからです……(汗)。

私の会社は、その周辺ではランドマークである高層ビルに入っています。
このビルは、夜だけ誰も乗っていない&呼んでいないエレベーターが突然開くとか、夜だけ誰も立っていない男子トイレの小便器の水が流れるなんて、毎晩のことなんです。

その中でも、特にテナントに忌み嫌われているフロアがあります。
ビルの下から1/3くらいのところです。
これは、一般の方がこのビルを外から見てもわかるはずです……その理由を書きます。

ある晩のこと。企画開発の中堅であるH君が遅くまで残って仕事をしていました。
現場の作業と、今後の企画業務の環境整備の仕事を命じられ、人の二倍働いていたんです。
H君が働くそのフロアは、ビルの下1/3とはいえ、地上10階以上です。
周囲のネオンや街灯、行き交う車のライトなどで、夜景がすごくキレイなんです。

考えすぎて疲れたH君は、夜景を見ながら疲れた頭をリフレッシュしようと、ノビをしながら窓に近づき、窓際に立っていつもの夜景を楽しもうとしました。
……ふと気が付くと、目の前に夜景を遮るなにかがありました。

『??』

キレイな夜景を遮る『それ』は、青白い女性の顔だったそうです。

疲れた中での不意打ちだけに、H君は最初目の前の出来事が理解できなかったそうです。
いまの状況を頭の中で整理してから、がくがくと腰が抜けました。
地上10階以上の窓の外に女性の青白い顔だけがあり、いま彼と目が合っているんです。
その顔は無表情で、ただただじーっとH君を無言で見つめていたそうです。

腰が抜けたH君は、這うようにして逃げようとしました。
すると、女性の顔の下に突然腕が出てきて、両掌が窓に『ペタ』と押し付けられました。
その女性は、掌をペタペタと(パントマイムの透明の壁のように)動かしながら、彼の動きを追いかけます。

右に逃げると右にペタペタ、左に逃げると左にペタペタ……。
彼は、やりかけの仕事も自分の荷物も放り出したまま、事務所を飛び出していきました。

翌日、H君は会社を休みました。
H君の電話を取り次いだ管理スタッフは、H君からその理由を聞きました。
彼女が窓を見ると、H君の言葉を裏付けるように、うっすらと手形がついていたそうです。
このビルは、毎日の窓の外の清掃を正午前に(ロボットで)行うのですが、その清掃が終わるまで、窓の外に付いた手形は残っていたといいます。
 
そのすぐ後、このフロアの有志が集まって真偽を確かめようとしました。
そのときも、やはりその女性の顔に出くわしたそうです。
やはり無言で、有志たちの顔を、ただただじー…っと見つめていたとのことです。

この一件以来、このフロアでは、朝から晩までブラインドをおろすことにしました。
ときどき日中にビルの管理会社が窓の内側を清掃に来ているのですが、そのときでもブラインドをあげずに清掃をしてもらっているそうです。
(清掃の方々も騒ぎは知っているでしょうから、イヤだろうと思いますが……)

その部署の知り合いに聞くと、なにも心霊的な対策はしていないということです。
なので、例の女性の顔は、いまでも毎晩ブラインドの外にいるのかもしれません。
一度私にも確認させてほしいとお願いしたのですが、本気で怒られました(汗)。

ちなみにその後、H君は配置転換で事務所が変わったものの、元気だそうです。
後発で女性の顔に出くわした有志にも、とりたてておかしなことは起きていません。
結局、理由も何もわからない、完全放置で解決もしていない、というのが現状のようです。

女性の顔のお話は、すべてこの部署の人間からの伝聞です。
一方で、このフロアのブラインドが常におろされているのは事実です。
もしも、このフロアの部署の人間全員で私たちをかついでいるとしたら、それはそれで(別の意味で)怖いというか、興味深いことなんですが……。

このビルを外から見ても、このフロアだけいつもブラインドがおりています。
もしもみなさんのまわりで、昼間からブラインドをしめているところがあったら、夜中に目を凝らして見ていると、なにかが見えるかもしれません。

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?149

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