一族の墓

霊感ゼロのはずの嫁が5歳頃に体験した話。
長いが全然怖くない話。

嫁の実家の墓はえらい沢山ある上に、あまり区画整理されておらず、古い墓が寺の本堂側とか半分林の中とかにもある。
今は多少綺麗に並んでいるけれど、以前はもっと散在してたらしく、もうちょっと一族の墓をまとめましょうということになったらしい。

坊さん立会いで墓石を動かして、少し掘って下に骨壷があればそれも一緒に移動して、と作業していたらしいのだけど、5歳の嫁はすぐに飽きて適当に林で遊んでいたらしい。
そしたら林の中で、黒っぽい着物姿で髪もちゃんと結った若い女に会ったそうだ。
まるで日本人形みたいな化粧で、林には相当不釣合いで怖かったらしい。

「あれは何をしているの?」と女が大人達の様子を聞いてきたので嫁は「ウチのお墓を動かしているの」と答えた。
すると女は嫁の名前を聞いてきたらしい。
嫁が名乗ると女は怒って「お前、△△の子か!」と腕を捕まれた。
すごく痛かったらしい。

「そんな人知らない」と嫁が言っても「嘘つくな!お前はあの女にそっくりだ!」と話を聞いてくれない。
「おまえなんか!」と女が腕を張り上げて、叩かれる!と反射的に嫁が体を竦めたところで嫁を探しにきた母親に名前を呼ばれて、気が付くとそこには女はいなかったそうだ。

「女の人が怒ってた!」と嫁が泣くので一応その付近を改めると、『×××衛門側室□□ 子□×』と彫られた一応嫁実家の小さな墓石が出てきた。
大人たちも側室さんがいるってウチは一体なんだったんだ?と驚いたらしい。
嫁はこの時、何故か手首脱臼+藪でかぶれたのか腕に酷い蚯蚓腫れが出来たそうだ。
蚯蚓腫れのあとは今でもうっすら残っている。

お彼岸だからとお墓参りした時、嫁が古くて小さい墓石を指差して「そうだ!これ!これねー」と嬉しそうに語った話なんだけど、墓石の文字は薄れて「側室」ってところしか見れなかった。

「きっと側室の人だから、本家の子の私が憎たらしかったんだろうね」
と線香あげつつ言ったあと、「そういやこの人のお墓移動の時、土葬だったせいで頭蓋骨に木の根っこが入って取れなくて小さいからって私が手を突っ込んで取ったんだよね。あの女の人の脳味噌引きずり出すみたいで、なんか嫌だったなぁ。頭蓋骨の内側に根がこびりついていて、なかなか取れなくて。片手は痛いし、片手は頭蓋骨だし、あれは散々だった!」
と、嫁はため息ついた。
俺にはどっちかっていうと嫁の度胸のほうがほんのり怖かった。

ほんのりと怖い話43

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