無数の携帯電話

以前、山が連なる場所にある高速道路を車で走っていたとき、急に車が変な音を出し始めた。
ギ、ギ・・・と何かが擦れるような、あんまり聞いた事のない音。
たまたますぐパーキングだったので入る事にした。

そこはよくある大きいパーキングではなく、トイレと自販があるだけの小さな休憩所だった。
真夜中だったので周りには誰もいない。とりあえず車を止めて後ろに周り色々見てみたが、異常は見つからなかった。

仕方なく諦めて、ついでだからトイレだけしとこうと思って行った。
周りは山、山、山で、しーんとしていてちょっと怖かった。
トイレが終わり、手を洗って駐車場へ向かおうとした時、携帯が鳴った。

しかし、それは自分のものではなく、トイレの建物の横から聞こえてきた。

?と思ってよく見てみると、草むらの上に無数の(50個はあった)携帯電話が落ちていて、それのうちどれか一つがピリリリと鳴っていた。

訳も分からずめちゃくちゃ怖くなって、慌てて車に飛び乗ってパーキングを出た。
焦りながらもしばらく走ったが、あの車の異音はなぜかもうしなくなっていた。

目的地に着いた時にはもう日が明けていて、安心してダッシュボードを何気なく開けたら、画面にヒビが入って壊れた、知らない携帯電話がひとつ入っていた。

暫く固まっていたが、ゆっくりそれを地面に置いて、鳴らない事を祈りながらその場を離れた。
帰りに戻ってきた時も、その携帯電話はそのままそこにあったが、見ないようにして車を発進させた。

何だったんだろう。

山にまつわる怖い話58

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