ある人が子供の頃の話
ある山の麓に、大人たちが「入ってはいけない場所」呼ぶ場所があったそうで、そこは山の麓の、一畳ほどの空き地だったそうだ。
なんとこの空き地、草一本生えず、その場所の上に貼り出す樹の枝さえも完全に枯れていたという。
まさにそこだけ切り取られたように、本当になにもない更地であったそうだ。
しかし、大人たちはその空き地に入らないように気をつけながらその空き地に畑でとれた野菜や山菜なんかを置いて帰ってゆく。
体験者が「ここは入っちゃいけない場所なのになんで?」と問うと、大人たちは笑いながら「人なら、顔さえ入れなかったら大丈夫」と言ったという。
また、「ここはどんなものを置いていても動物が近寄らないから、大荷物になった時はここに放置しておくんだ」とも語ったという。
そんなある日、その体験者はこの場所がどうしても気になり、誰もいない隙を見計らって、この場所に一歩足を踏み入れたそうだ。
途端に、パクッと上半身ごと何かの口に喰われるような感覚がして、当たりが真っ暗になった。
周りは普通の里山の光景だったのに、身を乗り出してこの場所に頭を入れた瞬間、景色だけでなく音さえもいっぺんに消え、テレビの主電源を消すかのように、すべてが真っ暗になって何も見えなく、何も聞こえなくなったのだという。
えっ? と思って咄嗟に身を引くと、まるで今までの光景が嘘だったかのように、元通りの里山に戻っていた。
この場所は単に入ってはいけない場所なのではない、この場所には何者かが居座っているのだと、体験者はそう思ったそうだ。
山にまつわる怖い話60