AのHP

結構前の話。

その時俺は絵を描くのが趣味で、HPとかも持っていた。
そんでまあ、同じように絵を描くのが趣味な人との交流を、楽しんでいたわけだ。

ある日、ネットで同い年の知り合いの、Aの絵描きサイトが閉鎖されていた。
閉鎖するなら、せめて一言位連絡入れてくれてもいいのにな…と思いもしたが、まあ、何か事情があったんだろうな、と思って割り切る事にした。

数ヵ月後、自分のHPのリンクを整理していたら、そのサイトのリンクが残っていた。
何気なくそこへ飛んでみたら、AのHPが復活していた。
あれ?ここ閉鎖したんじゃなかったっけ?
と思って中身を見ていたら、日記に洒落にならない事が書いてあった。

『うつ病で首吊って自殺未遂』

Aは不登校やらリストカットやらオーバードーズやら、色々と精神的に病んでいた様で、HPを復活させたのも、欝が治ったからではなく、闘病の一環としてやっていたのだろう。多分。
俺がAに出来た事と言うと、大したことは無いんだが、少しでも力になれればと思って、ちょくちょく話し相手になっていた。

最初の頃はやばそうだったが、時が経つにつれて、Aも大分良くなってきていたように見えた。
俺はと言うと、その時高校3年生。
つまり、バリバリの受験生だったので、夏が過ぎた辺りからは、ほとんどネットに繋がなくなっていた。
その頃にはAも大分落ち着いてきていたし、もう大丈夫だろうと安心していた。
俺は受験に専念し、大学に合格する事が出来た。

合格して落ち着いたところで、久しぶりにAのHPに行くと、Aも引きこもるのを止め、専門学校に行く事にしたらしい。
『一緒に新生活頑張りましょ』
『新生活は不安ですがドキドキします』
とか、Aも色々言ってたんだよ。
だからまあ、俺も喜んでた訳だが。

で、学校の始まる手前、急にAのHPの更新が途絶えた。
3月末に、俺のHPのお絵かき掲示板に絵を描いて以来、何の音沙汰も無い。
常識的に考えて、単に忙しくて更新できないだけだろう。
とは思ったが、前に自殺未遂した事もあったし、何となく嫌な予感がした。

入学式のシーズンが過ぎた辺りで、久しぶりにAのHPの日記が更新してあった。
内容は入学式について。
日記の文章が少し変だったが、嫌な予感ってのは思い過ごしかと思い、Aの掲示板に、俺の方の入学式の内容を軽く書き込んだ。

そこから一ヶ月位、AのHPは更新されなかった。
掲示板も放置されていて、俺の書き込みに対するレスも無かった。

妙だな~と思っていたある日、AのHPで久しぶりに日記の更新があった。

『私はAの父親です。 3月●●日、Aは他界しました。』

( д)  ゜゜
最初は手の込んだ嘘かと思ったが、本当のようだった。
その事に呆然としている時、ふと●●日と言う日付に引っかかる物があった。
自分のHPのお絵かき掲示板を見ると、Aが俺のHPで、最後に描いた絵がすぐ見つかった。
日付を見ると、●●日の前日の午後9時頃。

…もしかして、死ぬ直前にかいた絵?
Aは俺に対する別れの挨拶のつもりで、絵を描いたのだろうか。
すぐにレス付けておけば、最後に話が出来たかもしれない。
もしかすると、Aを止められたかもしれない。
Aが死んでからそろそろ1年近く経つが、
今もふと、あの時ああしていれば…と考え込む事がある。

ここまでなら、純粋に悲しい思い出だったのだが…。
この話はもう少し続きがある。

何で3月に亡くなったはずのAのHPが、4月に更新されてたかと言うと、Aが死ぬ前に、机の上にHPのパスワードを書いた紙を残しておいたようで、つまり、4月以降に書いた日記は、父親が書いていたという事だ。
俺は↑で言ったように、Aが亡くなった後で掲示板に書き込んだんだが、
『俺も入学式行ってきましたよ。(中略)では、お互い新生活頑張りましょう』
これを子供を亡くしたばかりで、悲しんでいる親に言っていたと言う訳で…。

何 や っ て ん の 俺 (‘A`)

体験した事をただ書いてるだけだから、他人にとってはオカルトでも怖くも面白くも無い話だが、『俺にとっては』死にたくなるほど洒落にならない話です。

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?91

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