のっぺらぼうたち

俺がまだ幼稚園の頃、まだ祖母ちゃんと寝ていた頃の話。

その夜俺はいつものように祖母ちゃんの部屋に行き、そして昔話を聞いてから寝た。
その時はまだ何も変わりなかった。

深夜俺は何故か目が覚めてしまった。
トイレに行きたいわけでもないのに、目がさえて眠れない。

その時祖母ちゃんがうなされる声が聞こえてきた。
俺は気になってそっちを見た。

…誰か立ってる!
祖母ちゃんの布団のまわりを取り囲むように人が立ってた。
それは顔が無く、着物を着ておかっぱ頭でみんな同じ格好だった。

でも何故だろう?
何か悲しいような感じがした。
顔が無いのに悲しい表情をしているように感じた。
でも同時に怖い顔で笑っているようにも感じた。

俺は怖くなって頭から布団を被り、そのまま朝になった。

明るくなってきて、俺が恐る恐る顔を出すと「のっぺらぼうたち」はいなくなっていた。
俺はすぐに祖母ちゃんを起こし、深夜あったことを伝えた。

すると祖母ちゃんはこんな話をしてくれた。

「実はのう、ワシには小さい頃に死んだ妹や弟が何人もおってのう。あの頃は戦時中でろくに線香もあげてやれんかった。それでのうこないだ小さな地蔵を立ててのう、お寺さんに戒名をつけてもらってお経も上げてもらったんじゃ。そうか…お礼を言いに来たか…」

と祖母ちゃんは目を細めた。
俺が祖母ちゃんうなされてたよ?と聞くと祖母ちゃんは怪訝そうな顔をして

「夕べ、祖父さんの戦死した夢を見てな、恐ろしい夢じゃった。祖父さんに何もなけりゃいいが…」

と言った。

実は祖父ちゃんはこの時、風邪をこじらせて入院していた。
俺は何か悪い予感がしていた。

そしてその予感は現実のものとなった。
朝食を取っていると病院から電話がかかってきた。
祖父ちゃんの容態が急変したからすぐに来て欲しい、とのことだった。
親父達は病院に行ったが、俺は幼稚園に行かされた。

そして祖父ちゃんはそのまま死んだ。
俺は悲しいよりも怖かった。
怖かったのはあの「のっぺらぼうたち」が何のために出てきたのかわからなかったから。

祖父ちゃんの死を知らせに来たのだろうか?
ただお礼を言いに来ただけだろうか?
それとも…本当に、祖母ちゃんの弟妹だったんだろうか?
もちろんこれらの謎は解けるはずも無く今に至っている。

ただ実家に帰り墓参りした時にその地蔵を見ると、すごく不気味に感じる。
そうだ…
この地蔵の笑い方…

あの「のっぺらぼうたち」に感じた笑みと同じだ…

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?79

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする