監視カメラ

今から三年前の浪人時代の話。

自分は元々 人見知りが激しくて、代ゼミに通ってしばらくは友達もできず大変だった。
そんな自分に話しかけてきてくれたのが、S だった。
Sは代ゼミから、当時 5駅目のF寮の5階(4階だったかも)に住んでて、明るいけど やることはしっかりやるタイプの人だった。

ただ 五月の連休明け辺りから、Sが急に無口になったんだよね。
最初は勉強疲れかなと思ってたんだけど、何か様子が違う。
ある日 授業が御互い7時に終わる時があって、思い切って Sに「晩飯、近くのマックにでも行かない?」と誘ってみた。Sは二つ返事で、OKしてくれた。

自分は マックで、Sに最近なぜ 元気がないか聞いて見るつもりだった。
が、マックに入り 席についた時、その話題を先に切り出したのはSだった。

「最近 誰かに部屋見られてる気がして、眠れないんだよね」
俺は その時はただのストレスなどで、Sは眠れないだけだと決め付けていた部分があり
「気のせいじゃないん?ただ 疲れてるだけだよ。そんなに気になるなら、部屋に監視カメラでもつけたら?(笑)」
みたいなことを言ったと思う。
Sも不安を話して気が楽になったのか、ほっとした表情だった。

その後しばらくしてから、まるっきり Sの姿を代ゼミでみかけなくなった。
自分は S、何でこないんだろ?と思いつつもそれほど気に止めてなかった(予備校では、サボってそのままフェイドアウトの人が結構多かったため)

その後は特に変わったこともなく過ごしてたが、丁度 模試とか夏季講習とかで忙しくなり、もうSのことなど忘れかけてた頃だったと思う。
ある日 予備校が少し長引き、自宅に帰ると玄関のドアの隙間に不在者届けが挟まっていた。
自分はてっきり いつもの親の仕送り(ラーメンとか)と思い込み、早速 宅急便に連絡して荷物を取り寄せた。

間もなく 宅急便の人が荷物を届けにきてくれた。
その荷物はいつも親が仕送りを送ってくれる段ボールのサイズよりかなり 大きく一瞬あれ?と思い差出人を見た。

差出人にはSの名前だった。荷物は段ボール自体かなり大きいのに、やけに軽い。
自分は 何を送ってきたんだろ?と思い、早速 荷物を開封してみた。
開けた瞬間 目に飛び込んできたのは意外にも綿だった。

自分は Sのいたずらかな(こういういたずらが好きだった)と思いつつも 一応箱の中の綿をまさぐり、中を引きづづき確認してみた。
すると 綿の中心部分辺りに堅い物体らしきものがあるらしく、自分はその物体を取り出してみた。
その物体は赤いビニールテープで回りをぐるぐる撒きにされたビデオテープであり、自分は何となくこの時 いたずらにしては気味が悪いと感じはじめていた。

そう思うも、多少なりとも 自分の中で興味があるらしく、気がつくとビニールテープを全てはぎ取り そのビデオテープをデッキに差し込む自分の姿があった。
結構 ビデオの中身に期待(AVの期待も少し持ってた)していたもののテレビ画面に現れたのはビデオカメラをセットしているSの姿だった。

ビデオには、Sのある日の生活が写し出されているらしく、勉強している姿やトイレに行く姿まで写されていた。
自分は食い入るようにビデオに見入ってた自分が馬鹿らしく思え、飯を食いながらや勉強しながらと ながら作業をしつつそのまま ビデオを回していた。

ビデオは丁度 Sが勉強し終わった辺りだったと思う。
突然 やけに窓を気にし始めたんだよね。何回もちらちら見ていたのを覚えている。
しばらくすると Sは何か1人言を呟き 急にそわそわし出した。

次の瞬間 Sは机の引きだしからカッターを取り出し、窓に向かい 1人言を呟きながら切り付け始めた。正直 正気とは思えなかった。
しばらく切り付けてたが、突然 Sの横にある人の背丈はあるかという程の本棚が倒れてきて…その後ビデオに写っていたのは、Sの悲鳴と血だらけになったカーペットだった。
ビデオはそこで終わっていたが、本棚が倒れた一瞬 窓に何か写ってた気がしたが怖くて 再度見れなかった(5階だし気のせいと思いたい)

後日 F寮の寮母さんから聞いたが(最初はしらを切り通された) Sはカッターで作業中に本棚が倒れてきたらしく、首の根元に刃がささり そのまま出血多量で…って説明を受けた。
ビデオは送られてきた段ボールに入れ、後日 気味が悪いのでお寺に持っていったが、段ボールの底に長い髪がついてたらしい(あの時段ボールをひっくり返しても、長い髪なんてなかった)

でも、死んだSが どうやってビデオを俺に送りつけてきたのだろう。
一応荷物の宛名の字は確かにSの字だった。
あと、何のために送ってきたのか…怖くもあり、不思議だったよ。

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?77

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