小学校の頃、帰りが遅くなったので近道に農道みたいなとこを通っていた時。
途中潰れかけの農具入れみたいな小屋の前に変なものがあった。
一輪の荷車の上にカブみたいな野菜が乗ってたんだけど、奇妙な事にそれには葉っぱの部分がなかった。
多少泥の付いた白い部分だけ。
カブを半分に切ったものを二つあわせたみたいになってて、両端には根っこみたいなものも付いてた。
何だろう?と思って近づいてよく見てみようとした時、その野菜に”目”が付いているのが解った。
最初は蝿か何かの虫が動いているのかと思ったが、ちゃんと瞳があってそれがきょろきょろ動いてた。
あまりの事にビックリして、凍り付いたように動けなくなっていた時、
「・・・・・・・・・っ」
何かを喋る前の息遣いのようなものがその野菜から聞こえたような気がして、その途端大声で泣きながら家までとんで帰った。
ところが、家に帰って泣きながらその奇妙なものの話をしたのに、母は「へえ、ホンマに」とか「怖かったねぇ」とか言うだけで、意外なほど素っ気なかった。
婆ちゃんもニコニコ笑ってるだけだし、父なんかまるで興味ないのか新聞を読んだままだった。
弟は少し興味を持ったが、それでもホントの事だとは思ってなかったらしい。
翌日、学校でそのことを話したら、たちまち評判になって”妖怪 野菜首”とか”顔野菜”とかいってちょっとしたブームみたいになったけど、それ以降、私以外にそれを見たという人は出てこず、飽きっぽい子供の事だからすぐに違う事に興味を移してしまった。
私自身も見間違えだったのだろうと思い、そのことすら忘れかけて数ヵ月たったある日。
突然母に言われた。
「○○ちゃん(=私)、あんた前変なん見たやろ?」
「うん、見た」
「あれな、見たことあんまり人に言わん方がよかったんやで」
「何で?」
「何でも。もうあんまり言わんときね?」
「・・・・」
その時はそれっきりだったが、後にその事を母に聞いてみたところ、母親も婆ちゃんもそれを見たことがあったらしい。
だがそれが何なのか、見たことを人に言うとどうなるのかについては、やんわり誤魔化して決して言おうとしなかった。
死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?72