ついてきた

叔父から聞いた話。

叔父は先週末に近場で登山にでかけた。
あまりの蒸し暑さに6合目あたりでヘバってしまい、一休みして、持参したスポーツドリンクを飲むことにした。

ところが、スポーツドリンクのペットボトルの様子がおかしい。
コンビニで買って、そのままリュックのポケットに突っ込んだはずなのに。
フタのところに深いヒッカキ傷があり、フタのミシン目は切れており、中身が少し減っている。
誰かが開けて一口飲んだようにしか見えない。

俺なら慌ててペットボトルを放り投げる場面だが、叔父は腹の据わった人で、手にとって見ているうちに腹が立ってきたという。
喉は渇くし、目の前にスポーツドリンクがあるというのに、いくら何でもこんな気味悪い状態では飲めない。
叔父は怒りに任せて、中身をジャバジャバと地面にブチ撒け、何となく登山する気も失せて、そのまま下山を始めた。

ところが叔父の後ろから、茂みの中を「カサコソ」と何かの音がついてくる。
止まれば音も止まる。
歩き出すと、また「カサコソ」とついてくる。

俺なら脱兎のごとく走りだす場面だが、豪気な叔父は立ち止まり、後ろへ向き直って「もう何もねーぞっ!」と怒鳴った。
すると、いままで立ち止まると音も止まっていたのに、今度は叔父に向かって
「カサコソ・・・」
「カサコソ・・・」
と近寄ってきたという。

俺なら確実に失禁する場面だが、実は優しい叔父はふと思い当たって、穏やかな調子で「もう怒ってねーぞ。気にすんな。」と話しかけると、それきり音はしなくなったという。

なんか聞いてて「姿を見せろ!何者だ!」「フフフ・・・私は小心者」みたいなコントを思い出した。

ほんのりと怖い話58

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