祖母が亡くなってしばらく経った頃。
線香をあげに来ていた叔母2人が仏間でじっと一点を凝視していた。
視線の先には祖母の遺影。
拝むでもなく懐かしむでもなく、ただじっと凝視している。
不思議に思い自分も遺影に目を向け仰天した。
祖母の口だけがもの凄い速度でパクパクと動いている。
まるで口の部分だけ動画を合成してさらに早送りにした様な感じで、声は聞こえずただ猛烈に捲し立てている。
あっけにとられていると、いつの間にか遺影は元どうり祖母が微笑むただの写真に戻っていた。
「相変わらずせっかちやねぇ」
「あんな早口で言われたら何言いたいのか分からんわ」
母親の遺影の異変に動じる事もなく、2人の姉妹はそう語り合っていた。
ほんのりと怖い話58