女神が守る山

子供の頃に、ユースホステルのキャンプに放り込まれたことがある。
最終夜に肝試しがあって、その前に一般宿泊客も参加した怪談の会があった。
そこで一般客の、大学生のお兄さんが披露した話。

彼の田舎は海のなし県の山間部にある。
近くには手軽に上れる山があって、他県から登山に来る人も多いという。
その山には、大昔から女神が住んでいると言う。
一つの山とその周囲のいくつかの山が女神が守る山だという。

彼女の夫は人間で30年~50年位で代替わりしていく。
女神は人間に姿を見せないのが決まりで、移動するときは獣の皮を被って姿を隠すそうだ。
夫選びの時も、獣の姿になってつかず離れず、その人の後を突いて回って人柄を見極める。
そして、折を見て獣の皮を脱いで姿を見せる。
夫に選ばれた男は一度は里に帰るものの、結局は何もかも放り出して女神の夫になる。

里に帰ってきてから山中であった美女の話をして、仕事も親も捨てて山に戻ってしまう。
30年~50年位の割合ででそういう特徴的な失踪者が出るので、地元では夫が変わったと判る。
夫に選ばれた人の残した話では、ものすごい美人だそうだ。

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