小学校4年の頃。
自分の部屋でゲームしてた。
飼ってる茶ブチ猫がボタン押したんで怒った。
茶ブチ猫は隣家側の窓の定位置に戻った。
せっかく覚悟決めて戦うとこだったのに。
気分転換になんとなくベランダに出たら景色がぜんぜん違う街並みだった。
俺んち関東なんだけど、京都みたいな町で「うおー!すげー!」とか思って眺めてた。
俺んちは急な坂の上にあるらしく、右を見たら自転車に子供を乗せたおばちゃんが、上り坂をはぁはぁ言いながら自転車を手で押してた。
ベランダも手すりが古くて錆びてて上から乗ると端が外れてた。
赤茶色でお寺の手すりみたいな肉まんみたいのが付いてた。
当時からオカルト好き少年だった俺は楽しくて興奮してた。
「親にも教えなくちゃ!」と部屋に戻ったら様子が違う。
俺の部屋なんだけど茶ブチはいないしテーブルに開けてある菓子の箱と手紙がある。
蓋に○江って隣のおばさんの名前で熨斗があって、中の菓子は黄色い袋に入ってていくつか空袋があった。
オカルト少年だった俺は(戻れてない!)と咄嗟に思った。
急に恐怖で(早くしなきゃ戻れなくなる!)とパニックになりベランダに出ようとした。
その時(何か元の世界のものを持たないと帰れない!)と考えてテーブルの上のゲームソフト(空箱)を掴んで出た。
ベランダは新しくて綺麗になってたけど景色は江戸時代みたいになってた。
右側は坂のままだけど誰もいない。
左側に大きな木造の建物があった。
中に着物の人と数人の白いパンツの人がいて俺を見つけて窓から指をさして騒いでるようだった。
俺を捕まえるような感じで白パン達が部屋から走って出た。
ビビって部屋に逃げ込んだら茶ブチ猫が部屋のベランダ入り口にいた。
猫を見た瞬間(戻れた!)と思って泣いた。
それからは異世界に行くこともなく無事に過ごし、家はビルに建て替え茶ブチ猫も22歳の大往生で逝った。
不可解な体験、謎な話~enigma~ 106