兄貴

大学の頃、祖父が変な霊能力者のババアにはまったことがあって、俺も一回見てもらえ、とか言われて連れて行かれたことがあるのね。
高級マンションに住んでて、金の仏像とか並べてる胡散臭いババアだったんだけど、で、そのババアは死んだ人間の声が聞こえるとかいうやつで、俺が水子に祟られてる、とか言ったの。

で、確かに俺長男なんだけど、俺生む前に母親が流産してて、本当は生まれる筈だった兄貴がいるのね。
その兄貴が俺を恨んでると。
で、その言葉を聞くとか言い出した瞬間、部屋に置いてあった仏像の首がボキッて取れた。
微妙な空気になって、結局水子がどうとかいうのもうやむやになって終了。

んで、俺はダイビングやってて、次の日伊豆に友達と潜りに行く予定だったんだけど、夜中に電話があったの。夢かもしれないけど、確かに電話を取った記憶がある。
そしたら、男の人から電話で、その時は「ああ、こいつかー」って思ったけど、一緒に行く予定だった友達じゃないし、後から思い起こすと誰だか全く分からないのね。

ともかく、電話に出たら「俺明日予定が出来たから行かないわ。お前も行くなよ」
って言われて、何だかじゃあ俺も行くのやめよう、って思って、本当に行かなかったの。
そしたら、後からそのダイビング出た船が転覆して、友達も危うく沈みかけるって事故が起きて、本当にビビった。

考えてみると、俺幼稚園の時にトラックにはねられたけど無傷で、小学生の時はビルの二階から落ちたけどランドセルがクッションになって無傷で、高校の時は海で流されかけたけど、ボートに拾われて助かって、なんか今までに凄い命拾いしてるのよ。
それって、本当は生まれる筈だった兄貴が俺を助けてくれてて、きっと夜に電話してくれたのも兄貴で、霊能力者のババアが、祟ってるとか適当なこと言ったから、怒ったんじゃないかなと思ってる。

その話を地元の寺でしたら、
「水子ってのは俗世に出てないから生まれた瞬間仏様みたいなもんで、間違っても自分の兄弟を祟るなんて事はない」
って住職に言われて、何だかいつも兄貴が守ってくれているみたいで凄い落ち着く。

ほんのりと怖い話87

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