押入

6歳の俺と、2コ下の弟が、二人で留守番していた時の事。
弟は押入の上の段で、俺はその押入の前で、それぞれ遊んでいた。

俺が、いくつかソフビ人形を並べ、超合金ロボのロケットパンチで倒していく作業を続けていると、弟が変な声を出して、押入から飛び降りようとした。

でも、ロケットパンチで倒された人形たちが、死屍累々と転がっているのを見て、着地点の足場が悪いと思ったのか、弟は躊躇する。

とりあえず、俺がざっと人形を避けると、弟は慌てて飛び降り、すっ転んで床に顔を突っ伏した。
普段の弟なら大泣きするところだが、その時は無言のまま、四つん這いで反対の壁まで逃げて行く。

様子がおかしいので、どうしたのか聞いてみると、押入の奥に光る真っ白い顔が見えたと言う。
幽霊でも住んでるのかな?と思いながら、俺が押し入れの中を覗こうとすると、鼻先で押入の襖がスパーン!と閉まった。

俺と弟は無言で頷き合ってから、玄関へ向かった。
靴を履いて、外へ出て、ドアにカギを掛けたところで「うああああkjぁいおあふぁl;」と叫びながら、二人で近所の公園まで逃げた。

しばらくして、帰ってきたカーチャンを捕獲し、一緒に家に戻る。

押入の襖は閉まったままだった。

俺と弟は、留守番を放棄して勝手に外で遊んだカドで正座させられ、カーチャンに叱られた。
でも、背後の押入が気になって、小言はまったく耳に入らなかった。

ほんのりと怖い話89

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