うちの家はむかーしむかし鬼退治のお供をしたそうで、それ以来家に不幸がある時は凶刹が出る、らしい。
鬼が出るんだか、蛇が出るんだか、具体例は知らない。
そういう言い伝え。
多分それを実体験した。
去年の秋頃祖父が亡くなったんだが、亡くなる前日、自宅療養中だった祖父を見守りに俺と従兄弟が来ていて、夜中にちょっと一服しようと庭に出て2人でタバコを吸ってた。
そしたら庭の垣根に外側に人影がある。
祖父の家は高台の出っ張りにあるので、垣根によじ上るような奴はいないだろうと思うんだが、庭の電気をつけると見たことのないおじさんが、垣根越しにこちらを見てる。
見た目は普通のおじさん。ジャンパー着てた。
「おじさん、何してるんですか?」と話しかけたら、
「もうすぐ死ぬけんの」
とか言った。
おいおい縁起でもないと思ったら、従兄弟がカッとなったのか「何言うとるんか!」と怒鳴った。
けどそのおじさんは「もうすぐ死ぬけんの」とまた言った。
「やめてください」「もうすぐ死ぬけんの」
「ちょっとおかしいで」「もうすぐ死ぬけんの」
ヤバいおじさんが来てしまったのでは、と思って家の中の誰かに言おうと振り返ったら、「あっ! おらん!」と従兄弟の声。
垣根を見ると確かに誰もいない。
落ちたのか? と思って垣根に近寄ったけど下の道路にも誰もいない。
変な人がたまたま来てしまった、ってことでその後は従兄弟も俺も誰にも言わなかった。
でも次の日の朝に、祖父が急死した。
もう長くないから、ってことで自宅療養だったので、いつかは亡くなると思ったけど、まさか本当に翌日になるとは思わなかった。
あのおじさんが預言者とも思えず、あれがうちの凶刹なのかな、と思った次第。
ほんのりと怖い話91