冬の海に飛び込み男女2名が行方不明、そんなニュースを見て思い出した話。
私は子どもの頃、夏になると母方の実家のある島に行き、海で毎日素潜りして過ごしていた。
ある日、いつものように潜っていると、海底を歩く人たちがいた。
スキューバ客ではないので驚いて慌てて陸に戻り、「ダイビングのひとじゃないのに海の中歩いてるひとがいた!」と母親に報告した。
「ああ、それ、体育大学の合宿のおにいさんおねえさんだよ」
母親はそう言いながら少し離れたところの団体を示し、
「そろそろ日が暮れるから帰ろうね。」と、パラソルをたたみ始めた。
翌日、浜に行くとなんだかざわついていた。
昨日、合宿中の海の事故で体育大の学生たちが亡くなったと聞いた。
「えー、海で歩いてたおにいさんたち・・・あのあと?!」と驚き、海は怖いなあ、気をつけよう!と子供心に思った。
という話。
で、思い出して、その違和感に今初めて気がついて震えてるんだけれどもね。
海中を歩いてた人たちがねー、白い着物着てたんだけど、ええとさ、おかしいよね・・・?
白い着物着て、さらに沖に向かって海底を歩いてたんだよ。
「水着じゃないやー」て思ったけど、母親に「合宿の練習だって」て言われて、「へー」って納得してたけど、おかしいよ!今怖いよー!
あの頃の私は雑で、母親はもっと雑だった。
あの頃海で一番恐れていたのはウツボで、ほかはサメでも怖くなかった。
迂闊だった、どうかしてた。
30年遅れて届いた恐怖に震えがとまりません。
ほんのりと怖い話106