言葉にするとたいしたことないが、体験するとじわじわとくる話をひとつ。
うちのまわりはすごい静かな住宅街で、最近引っ越してきたんだよね。
うちは線路沿いに建ってるから、電車が通る音とかも聞こえるくらい静か。
昼間は道路で遊ぶ近所の子の声とか丸聞こえだけどね。
んで、俺両親と姉貴と弟と一緒に住んでるんだけど、家族で姉貴の買い物に付き合ったとき弟と俺はパスした。
姉貴買い物長い。弟も小さかったし。
まぁ、それはおいといて、弟がいきなり「ねえ、なんかお祭りやってるの?」とか言い出した。
はぁ?とか思いながらも、弟が言うように外の音をよく聞くと、祭り囃子って言うの?太鼓の音が聞こえててさ。
「マジか!」とか二人でテンション上がりながら外出ようとしたら家族帰ってきて、「あんたらこんな時間からなにしにいくのよ」って母親に言われて、弟が「お祭りの音がする!」って言った。
そしたら母と姉貴と父さん、何て言ったと思う?
「はぁ?そんなの聞こえなかったわよ?」
家の中にいて聞こえるのに外から聞こえないわけない。
なのにみんな聞こえてないって言う。
実際、その日やってる祭りなんてなかった。
その場は弟と俺の聞き間違いで納まったけど、それから一週間くらいして、今度は俺一人で留守番してたとき。また、聞こえた。
ドンドンドンって聞こえてくる。
流石に気になって外に出てみることにした。
サンダル突っ掛けて外に出た。
なんか駅の方から音が聞こえてる気がして、とりあえず向かおうとした。
んだけど。
うちのお隣さんはお婆ちゃんとおじいちゃんのふたり暮らしで、古くから住宅街に住んでるからって、引っ越してきたばかりの俺ら一家にとても優しいご夫婦だった。
そのご夫婦の奥さんが家の前を掃除していたのだが、いきなり箒を置いて俺の腕をつかんで「お祭りの音が聞こえるの?」って言った。
怖かった。心読めるのかと思った。
とりあえず「はい」って頷いたら、奥さんは突然真顔になって、「いってはいけないよ」と言って、腕をなおさら強く掴んだ。
いつも優しいおばあさんだからすごくびびった。
「ここら辺でお祭りは絶対にやらないの。だから…いっちゃダメよ」
理由は教えてくれなかったけど、その顔がすごく真剣で逆らえなかったから、その場は素直にうなずいた。
やっと解放されると思ったら、今度はグッと顔をちかづけられた。
「お祭りの音は、聞こえても無視しなさい。人に話しても構わないけれど、お祭りの方にいってはダメ」
すごくすごく真剣な顔だった。
怖くて怖くてこくこくと頷いて、離してもらった手を押さえながら全力で家まで逃げ帰った。
お祭りについてったらどうなってたんだろうな。
弟はあれ以来聞こえてないらしいけど、俺にはいまだに聞こえ続けてる。
ちな、これ書いてるのは、また一人で留守番なうで、音が聞こえてきて基本チキンな俺がどうすればいいかわからなかったから。
おばあちゃん曰く、相手が飽きれば離れるらしいね。早くしろ。
聞いてくれてありがとね。
ほんのりと怖い話109
コメント
この話、なんか訳の分からない良さがあるね、好きだ