友達から聞いた話。
彼女が中一の時、学校から家に帰る途中で空き地にしゃがみこんでるA君を見かけた。
A君は隣に住む小学一年の男の子で、弟のようにかわいがっていた。
近づいて見ると、水溜りを棒切れでじゃぶじゃぶかき回している。
「何してるの?」と声をかけると、「見ててね、面白いから」と言う。
どれどれ?と隣にしゃがみこむと、A君はかき混ぜる手を止めた。
荒れた水面が穏やかになるにつれ、写る景色の輪郭がハッキリとしてくる。
といっても写っているのは二人の顔と雲ぐらいだが。
すると「失敗だ」と言って、またかき混ぜはじめる。
何が失敗かも何が面白いのかも判らない。その後も2回失敗が続く。
さすがに飽きてきて視線をよそに移していると、「あっ」とA君が言った。
すぐに視線を水溜りに戻すと、二人の頭の間に知らないおばさんの顔があった。
驚いて後ろを振り返るが誰もいない。
え?と思いまた水溜りをみると、まだおばさんの顔が映っている。
彼女は「怖い」と思う前に「なんで?」と思ったらしい。
その顔をよく見ると、無表情でなんというか色味がない。
やがてその顔は水溜りに沈んでいくかのように消えていった。
するとまたじゃぶじゃぶかき混ぜながら、「ちょっと成功」とA君が言った。
「ちょっとなの?」
「うん、さっきは三つ出た」
そこで初めて怖いと思った彼女は、「帰って一緒におやつ食べよう」と言って、A君の手を強引に引いて帰ったそうだ。
後の二つは何が写ったのかは怖くて聞けなかったそうだが、「あのおばさんの顔は多分遺影だった」と彼女は言った。
ほんのりと怖い話114