神様の通り道

むかーし、とある僻地のホテルに勤務してた。
寮から車でホテルまで出勤する途中、原野にポツンと置かれたように忽然と大岩があるのがいつも気になってた。

岩というか岩山。
周りに比べる物がないからアレだけど、4〜5階建ての建物ぐらいはあったんじゃないかな、大きさ。
歪な丸形で切り立ってて、登る足場もなさそうなのに、その天辺にたまに白い旗が立ってるんだ。

数日続けてあったかと思うとしぱらく消えてる、また忽然と旗がたつ、その繰り返し。
道沿いからは見えない裏側に階段でもあるんだべ、と興味本位で友人と近づいてみた事があったけど、ある距離まで近づくと水に潜ったように耳がツーンとなって変な圧を感じたから、それ以上近づくのはよした。

ちなみに一緒にいた友人は何も感じなかったらしいが、その日家に帰ってから体調がめちゃくちゃ悪くなったらしい。自分は何とも無かった。

後日、地元民の知り合いに聞いたら、あの岩の辺りは地元の年寄り達によると、
「神様の通り道があるから、家や建物を建ててはいけないって言われてる。畜舎とか物置小屋とかはいい、でも人が住むのはダメだ」
と言われてるんだと。
旗の意味は…分からなかった。それ以上聞くのも何かなと思って。

さらに数年後、とっくにそのホテルは辞めて、ただの旅行でその地方に来た時、そういやあの辺はどうなってるかなと見に行ったんだけど、一本道なのに見つけられず通り過ぎてしまった。

それもそのはず、引き返してよくよく見たら、岩の真ん前になんとアパートが建ってた。
昔とはまるで周辺の区画の様相が違ってたから分からなかったんだな。
岩はちゃんとあったけど、前より岩の上に緑が茂ってただの小山みたくなってた。
古老の言うところの禁忌に触れてあのアパートが建ってしまってた訳だが、住んでる人大丈夫かなー…とほんのりした。

ほんのりと怖い話141

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