知らん人

数年前の話。

俺は有休消化のため、平日に休みを取った。

朝、遅めに起きて、適当に朝食を食ったあと、スーパーにでも、と自分の住んでいる階
からエレベーターで1階に降りた。
1階に着く前に、なんか男が大声で口ごもっている?ような声が下からするな、とは思っていた。(エレベーターホールに反響しているような)

1階につくと、俺がまだ降りてないのに、険しい顔の老女とその娘らしきおばはんがそそくさと入っていて、何だこいつら?とムカついた。

俺が「チッ」と聞こえるように言って、エレベーターを出ようとすると、婆さんが俺の腕を引っ張るようにして、おばはんのほうがドアを閉めようとするので、俺もキレて「何ですか!ちょっと!」みたいなことを言ったら、おばはん小声で「すいません」。

直後、さっき1階に降りる直前に聞こえた男の声で「ともゆきーーー!けんじーーー!」みたいな怒声があり、包丁を持った男がエレベーターの前を通り過ぎたのが、ドアのガラスごしに見えた。

「やばい」と俺たちが逃げるために最上階のボタンを押そうとあたふたしていたら、ガラスごしにその様子が目立ったらしく、一旦通り過ぎそうになった男がまた戻ってきて「開」ボタンを押したように見えたが、既にエレベーターは上がり始めているところだった。

おばはん「今、誰か通報してくれたから。してくれてた」
俺「今のは?なんですか?」
婆「知らん。いきなりだったもん、知らん人」

その日の俺は、外に出られなかった。

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?351

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