売れ残り物件

自覚している限り、霊能力はゼロに等しいと思っている私が先日体験した話です。
少し状況を整理したいので前置きが長くなってしまいますがお許しください。

私は埼玉県の不動産屋で働いています。
取り扱っているのは売買の仲介であり、広告媒体等に掲載する為に物件を調査し、現地写真を撮影しに行くのも仕事の一環になっています。

とあるデベロッパーが新築分譲した全20棟の大きな現場があるのですが、この現場が今回体験したお話の舞台となります。

現場の配置は下記のようなかたちになります。(行間等がずれて見づらくなってしまったらすみません)

──────────────  北
┐ ┌ ┬ ┬ ┬ ┬ ┬ ┐ ┌ ↑
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│ │G   │H│I│   J│ │
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│ │K   │L│M│   N│ │
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│ │O│P│Q│R│S│T│ │
┘ └ ┴ ┴ ┴ ┴ ┴ ┘ └
┐ ┌─────────┐ ┌

案の定思い切りずれてますね(悩)

新築分譲とは言っても、販売が開始されたのは3年ほど前からの売れ残り現場です。
立地条件も申し分なく、価格帯も適正な現場である為、1年もあれば完売するだろうと誰もが見込んでいた現場でしたが、図のN・Q・R区画は未だに買い手がつかず、売主業者も頭を抱えている状況です。

ではどうして買い手がつかないのか?
それはこの現場が“出る”と噂される現場だからなのです。

分譲開始当時、図のH・I・L・Mの各区画は路地状敷地形態(不動産業界では敷延物件と呼んでいます)と言って、他区画に比べて不整形な土地であった為、他区画よりも販売価格を安く抑えて売り出されました。
不景気の世の中ですから、質より価格を選ぶ顧客は多く、この現場内でもH・I・L・Mの各区画はすぐに買い手がつきました。

M宅の引渡しから半年程経ったある日、M宅のご主人が2階の納戸で首を吊って亡くなっているのが発見されました。
会社をリストラされて一家は離散し、残ったのは数千万の住宅ローンのみ…追い詰められての自殺だったのでしょう。

悲しいかな、このご時世を考えればよくあることですが、M宅は親族の要望で売主業者を通してエンドユーザーへ売却する運びとなりました。
完売前の分譲地内でこのような事件が起こることは、売主業者としても相当な痛手だったようで、当時、担当の田中さん(仮名)も長期戦を覚悟しなければならないと溜息をついていました。

そうは言っても、それから1年も経った頃には、G・N・Q・R区画とM宅を除く区画は買い手がついていたのですが、この頃から分譲地に住まわれているいくつかの家庭に立て続けに不幸が起こり始めました。

まず、L宅でボヤ騒ぎが発生しました。
幸い死傷者も出ず、被害も周りに及ぶほどのものではありませんでした。
次に、I宅のご夫婦が離婚され売却する運びとなり、J宅では奥様が交通事故で亡くなられました。

全て偶然なのかもしれませんが、こうも立て続けですと、さすがに不気味過ぎるとのことで、分譲開始から2年を経過した頃、売主業者から私の勤めている会社にG・N・Q・R区画の販売委託の話が持ちかけられ、現在に至ります。

そのような現場でしたが、私達としては、取り立てて特別視することもなく、いつものように物件を調査し、現地や周辺環境の確認する運びとなりました。

分譲地内の居住者宅を訪問した際、S・T区画には2区画を同時に購入して整骨院を開業した先生が住んでいるのですが、気さくな方だったのでお話を伺ってみたところ、「M宅に隣接している家でばかり不幸が続いているような気がして不気味だよねぇ」と笑っていました。

それから半年後、今から半年前のことなのですが、G区画の買い手がついて「よし、次も頑張ろう!」というタイミングでS・T宅の整骨院の先生が自宅の浴槽で亡くなっているのが発見されました。

親族の方の話を伺ったところ、死因は急性心筋梗塞で事件性はないとのことでしたが、直接お話をした私としては初めてこの分譲地に何か嫌な気持ちにさせられる事件でした。

9月のこと、それまで販売委託されていたN・Q・R区画に加えて、M宅についても委託されることとなりました。
不謹慎な話ですが、自殺物件と聞いて営業部の人間達は大層盛り上がっていたようで、早速何人かの営業が連れ立ってM宅の内見に出かけていきました。

帰ってきた連中は口々に「あそこはマジでヤバイ!」と連呼しており、何がヤバイのかと尋ねてみたところ、「他の区画と違って空気が重い」、「圧倒的に暗い」、「いくら換気をしても湿った感じがする」等、ありきたりな感想を返してきました。

ひとつ気になったのは、共通して「何もない家の中から“キン!”と得体のしれない音が鳴る。アレがマジでヤバイ」と言うものでした。
柱や床鳴り等を疑ったのですが、その建物は木造住宅で、聞こえてくる“キン!”という音は金属音のような電子音のような、表現しづらいけれど不快な音で、指摘されたような音ではないとのことでした。

そこで営業の一人が質問してきました、

「重要事項説明書(契約前に顧客に説明しなければならない物件の説明書)に入れなくていいの?」

と…

M宅の場合は、そこで居住者が自殺したという事実は告知事項として載せなければならないのですが、幽霊やそれに類するものは科学的な根拠がなければ載せる必要はないと判例が出ています。

状況的には、誰が行っても必ずその音はどこからか聞こえてくるので告知した方がいい…しかし根拠もないのに載せたら載せたでそれは問題ということで、結果として私も直接行って確かめてみるべきという話になりました。

本当に前置きが長くなってしまいましたが、ここからが本題です。

前述の経緯により、自称霊能力ありという営業の佐藤君(仮名)と私とで、先日、件のM宅の内見に出かけました。

佐藤君は皆の話を聞いてすっかり怯えていましたが、営業なんだし見ておかなきゃダメだろうと責められて、渋々同行といった感じでした。

私はと言えば、この分譲地については、私自身が事前調査を行って法務局の古地図等を閲覧しても過去に墓場や刑場等だったという利用形態も見当たらなかったので、皆大袈裟だなぁとしか思っていませんでした。

佐藤君の車に乗せて貰って現地に到着するなり、佐藤君は「うわっ!マジで空気重いっすよ!ホントにヤバイっすよここ!」と連呼していましたが、それには構わず広告掲載用の写真を撮っておこうと早速外観チェックに取り掛かりました。

奥まった所に本地のある敷地形態だけあり、各方位に建つ建物に取り囲まれていて、他の区画に比べると日当たりは良好とは言えない場所なので、これなら確かに不気味な雰囲気と言われても仕方ないなぁと思いました。

続いて、玄関脇の雨樋に吊るしてあるキーボックスから鍵を取り出そうとしたところ、玄関扉が開いていることに気付きました。
誰かが鍵を閉め忘れたか、それとも先客がいるのか?
そんなことを考えながらごめんくださいと玄関扉を開けてみました。

入口から見る間取りは、玄関を入ってすぐ右側に直線上の階段があり、その左隣の廊下の先に居間に続く扉があるという家でした。
居間に続く扉は閉まっており、階段途中の採光窓から陽は差しているのですが、それでもやはり薄暗い家といった印象を持ちました。
佐藤君は後ろから「階段を上がった先がヤバイ!」と騒いでましたが、それは奥の納戸で自殺があったからって先入観でしょと流して玄関内に足を踏み入れました。

踏み入れた瞬間、件の“キン!”という音が鳴りました。
佐藤君は「もうこれ以上進めません」とそこでギブアップしてしまいました。
私はと言えば、不意打ちだったので「えっ!?」と一瞬ビックリしてしまいましたが、先客もいるかもしれないし、その人の発した音かもしれないということで、構わず上がっていきました。

ひとまず、居間へ続く扉を開けて1階の様子を窺ってみます。
ちなみにM宅の間取りは3LDK+納戸で、1階には居間とダイニングキッチン、トイレ、洗面所、風呂があり、2階には3部屋+納戸という造りになっています。
居室を2階に集中させた間取りだけあって、1階のLDKスペースは25畳程度あり、家具も置かれていないその薄暗い空間はガランとしていて広く感じました。

おそらく水道を止めている為だと思いますが、下水臭が上ってきていたので、換気の為に居間とダイニングのシャッターと窓を開けてみたところ、入ってきた日差しで少し明るさを取り戻した室内はきちんと清掃もされていて綺麗に保たれているなぁと思いました。

続いて2階へ行こうと玄関に戻ったところ、佐藤君は相変わらず階段の先の方を見て「ヤベーよヤベーよ」とブツブツ言って待っていました。
「おまえは出川かw」と笑い飛ばしながら一人階段を上がって行く私。

階段を昇る途中、例の“キン!”という音がまた鳴りました。
音の出処は階段や床の軋みの音等ではなく、何と言うか、空間で鳴っているように思えました。

鉄骨造の家は壁内部の鉄骨が金属ストレスでたまに鳴るということは知っていたのですが、「木造の家も同じように鳴るのかな?木材が乾燥割れする音ならキンじゃなくてパキッとかだよなぁ…」などと考えながら2階に到着。

階段を昇り切った真正面に例の納戸があるので、“キン!”と同様にいきなりは勘弁だなぁと思っていたのですが、そこにいたのはスーツ姿の田中さん(売主業者の社員さん)でした。

「あれ、田中さん」と声をかけると、「あぁ、清水さん(←私・仮名)、下の方から声は聞こえてたから、誰か来たとは思ってたんですが、清水さんでしたか、お疲れ様です」とのこと。

「真っ暗な中から現れられたらビックリしますよ」と笑いながら言うと、「驚いちゃいました?この家が売れ残ったままだと他の区画も一向に売れそうにないので、せめて見栄えは良くしようと定期的に清掃に来ているんですよ」と笑いながら返されました。

まぁ、3年間も売れ残ってしまっては、担当者としては上司からも責められて大変だろうなぁと同情しつつ、「内観写真を撮りたいのでシャッター開けますね」と申し出ると、「じゃあ掃除も終わったところなので私は失礼しますね」と言い、1階へ降りていきました。

その後、私は各部屋のシャッターと窓を開けて換気しつつ写真を撮って回りました。

件の自殺のあった何度を含めどの部屋も1階同様に清掃されており、さして変わった様子もなく、デジカメに表示される写真にも何か変わったものが写るというわけでもなく、拍子抜けするほど何も起こらないまま内見を終えて1階へ降りていきました。

1階玄関では相変わらずの怯えた様子の佐藤君がいたのですが、降りていくなり、「大丈夫でした!?てか、清水さん2階で誰と話してたんです?」とのこと。

私「ん?佐藤君どっか行ってたの?」
佐藤君「いや、ずっとここに居ましたよ、清水さん誰かと話してるなぁと思って」
私「へ?田中さん降りてきたでしょ?」
佐藤君「え?誰も降りてきてないですよ!」
私「またまたぁ!そうやってビビらせようとしてるんでしょ?」
佐藤君「いや!マジですって!直階段だし、降りてきたら気付きますって!てか、清水さん気付いてます?俺達玄関入った時、靴とか無かったじゃないですか!なのに清水さん誰と話してるんだろうって…」

そう言うや否や、佐藤君が視線を上に向けて、「てか清水さん!いるいるいる!上にいるから!」と叫んで家から飛び出していきました。

ゾクッとしたところで追い討ちをかけるように“キン!”と鳴り、うわぁ…となって私も外に飛び出しました。

車に戻って佐藤君を問いただしたところ、2階の踊り場から階段を降りるのではなく、私の頭の真上を田中さんや見知らぬ何人かが玄関側の方へ宙を歩くように通り過ぎていき、突き当たった壁の所で消えていったとのことでした。
佐藤君いわく“キン!”の音の正体は彼等が壁に消える時に発する音なんじゃないかとのこと。

すぐさま売主業者に電話したところ、田中さんは8月にこの現場からの帰りに交通事故で亡くなっていたこと、それでM宅を担当できる人員が足りなくなってしまった為に私の会社に委託したのだということを聞かされました。

その後、私の身の周りで何かが起こったということはないのですが、売主業者にも田中さんにも申し訳ないのですが、その現場を売っていく自信はなくなりました。

ちなみにその現場はまだ買い手がついていないので、広告媒体で埼玉県内の敷延物件を見かけた際は用心してください。

無駄に長くなった割にこうして文字に起こしてみるとそんなに怖くもないのですが、あの時は本当に背筋が凍る思いをしました。

以前から面識のあった田中さんが普通に現れて幽霊らしいことをせずに消えてしまったので、自分の中のそういう世界へのイメージとのギャップもあって何だか不思議な気持ちになります。

以上となりますが、投稿規制とかいろいろ厳しくて反省。

読んでくださった方、支援の書き込みをしてくださった方、皆さんありがとうございました。

884 

携帯からですが↑の不動産屋です。

連投規制で全部書き終わるまで帰れなかったん ですが、書き終わって会社を出て駅に向かって歩いていたところ、いつも駅前にいる易者の方 に呼び止められました。

易者さんが言うには、私の後ろ立っているスー ツ姿の中年男性がくれぐれもよろしくとお願いしますと頭を下げて言ってますよ、頑張りなさ いとのことでした。

思い出したりすると引き寄せてしまったり、着 いてきてしまうと言うのは本当なのかな…

少し身震いしつつ、頑張って帰ります(^_^;)

977 :

先日分譲現場のお話をさせて貰った不動産屋の清水(仮名)です。
あ、前回書いていなかったのですが、私は32歳の既婚♀です。

あの投稿の後日談と言うか、今少し困ったことになっているので、皆さんに聞いて欲しくて再びこちらに書き留めさせて貰いたいと思います。

我が家は子供がおらず共働き家庭で13歳になる老猫♂とで暮らしています。
夫も洒落怖スレをROMするのが大好きなのですが、前回の分譲現場の体験談は夫には内緒にしていました。

投稿した晩、先に帰宅していた夫が私の投稿を見ながら

「不動産業界って怖いんだなぁ、おまえも似たような仕事してるんだろ?気を付けなよ」

なんて言うので、「それ私の投稿だよ」って返してみたら椅子から引っ繰り返って怯えてました(^_^;)

それから今日で5日目、今回お話させて貰うのは、夫が話してくれたこの5日間の彼の体験談です。

我が家は寝室のダブルベットで夫婦+猫で一緒に寝ているのですが、昨日の晩から夫は客間として使っている和室に布団を敷いて寝るようになりました。

ここのところ、夫は体調が優れないようで気になっていました。
何だか様子も変で、あの投稿を見て以来、何となく私を避けているような気がして、訳を聞いても「風邪をひいただけ、うつすわけにはいかないから…」の繰り返しでした。

今日は夫の仕事は休みで私は出勤日なのですが、どうしても気になったので、今朝は会社に遅刻する旨を連絡して夫に事情を聞かせて欲しいと食い下がってみました。
根負けした夫は仕方ないと溜め息をついて、開口一番こう言いました。

「なぁ、おまえ誰なんだ?」

「えっ!?」と思わず聞き返してしまいました。

この人は何を言っているのだろう、結婚してもう10年になると言うのに何を今更…頭がおかしくなってしまったのかと心配になってしまいました。

「そうじゃないんだ、いや…」と口ごもる夫、そわそわした素振りだったので、落ち着いて一から事情を説明して欲しいとお願いすると、ポツリ、ポツリと話し始めました…

以下、夫から聞いた話です。

私が前回の投稿をした日の真夜中、夫は尿意を催して目を覚ましたそうです。
部屋の灯りをつけて私を起こしたら悪いからと、枕元に置いてある携帯を手灯りにトイレへ行ったそうです。

夫の携帯は省電力モードにしているので、画面タッチ後に何も操作しなければ2、3秒程度で消灯してしまうそうです。
ですが、自分の位置等の大体の状況把握さえ出来れば良いので、それで良いのだそうです。

用を足して真っ暗な寝室へ戻ってきた時、ベットの位置を確認しようと携帯画面をタッチ、その時にライトが一瞬だけ私を照らしました。

私は寝る時に夫側を向いて横向きの姿勢で寝ることが多いのですが、その時もその姿勢だったようで、照らされた私の顔を見て夫は一瞬わけがわからないと思ったそうです。
照らされた顔は私の顔とは別人の、見たことのない女性に見えたのだそうです。

「えっ?」と思い、再び画面をタッチして再び私を照らすと、そこにはいつもの私の寝顔があるだけで、目の錯覚だったと思ってその日はそのまま寝たのだそうです。

翌日の真夜中、やはり尿意で目を覚ました夫。
前日のこともあって、夫は携帯を手にとって画面をタッチし、まず私の顔を照らしたそうです。

そこにいたのはやはりいつもの私。

夫はやはり昨日のは気のせいだと思ってトイレに行き、寝室に戻ってきてベットを照らそうとライトを傾けた瞬間、心臓が止まりそうになったそうです。
そこにいたのもいつもの私、そこにあったのもいつもの私の顔…ですが、カッと目を見開いていた私の顔だったそうです。

フッと消灯するライト‥すかさず画面をタッチし、もう一度照らすといつもの私の寝顔…

「身近な人間が霊体験をしたと知って変に意識しすぎているのだろう、ここで私を起こして今起こったことを話してもきっと笑われてしまうだけだろう…」

そうやって自分を納得させて寝に就こうとしました。

目を見開いた私の顔‥見たのは一瞬でしたが、いつもの私の表情に別の何かが重なっているようにも見えたそうです。
脳裏に焼き付いたそれが頭から離れず、考えれば考えるほど恐怖心が勝ってその夜は一睡もできなかったそうです。

三日目、真夜中に目を覚ます夫。

その晩は尿意ではなく、凍えるような寒さで目を覚ましたそうです。
とは言え、11月1日‥つい先日のことですが、関東南部に住んでいる皆さんはそんな寒さを感じたでしょうか?
少なくとも私は肌寒い程度にしか感じていませんでしたが、夫は吐く息が真っ白なほどの寒さで目が覚めたと言っていました。

身震いするような寒さでガクガク震え、毛布に包まって寝返りをうち、私の方を向くと、私は夫の方を向いて白い息を吐きながらスゥスゥと寝息をたてていたそうです。

ホッとはしたものの、その吐き出される息がとても冷たかったそうで、たまらず私に背を向ける姿勢で眠りに落ち、目が覚めたら風邪の諸症状が出て調子を崩していたのだそうです。

四日目、つまりは昨夜、夫は四度目の深夜覚醒をしたそうです。

いつも一緒に寝ている猫の唸り声が目覚めの切欠だったそうです。
我が家の猫は時々この子は犬なんじゃないかと思えてしまうほど誰に対しても人懐っこく甘えん坊な性格で、普段は私の布団の中で一緒に寝ています。

ですが、昨夜は夫が気付いた時には夫の胸元にいて私の方に向かって恐ろしく低い唸り声をあげていたのだそうです。
この子は飼い始めた頃に尿路結石にかかって苦しんでいた時期があったのですが、その時期にあげていた地の底から聞こえてくるような唸り声だったそうです。

真っ暗な寝室の中で、私に向かって唸る猫を確認し、夜目の利く彼にしかわかり得ない何か異常なことが起こっていると察した夫…
携帯を手繰り寄せるや否や画面にタッチし、私を照らし、息を飲んだそうです。

私の顔が、私の顔ではなかったそうです。

そこにあったのは一日目に見た女の顔…目だけは異様に爛々と輝かせて、白い息を吐きかけてくる私とは違う顔の女…
夫は唸り続ける猫を抱きかかえてベットから飛び離れたそうです。

「今後こそ見間違いじゃない」

そう思って携帯画面をタッチして照らすとそこには先程の女とは違う顔‥見たことのない物憂げな表情の中年の男…

ライトが消える‥画面をタッチする‥恰幅の良さそうな別の顔の男の顔…

ライトが消える‥画面をタッチする‥やつれた中年女の顔…

ライトが消える‥画面をタッチする…また別の顔…

同じ行程を繰り返し、その度に現れる別の顔に恐怖しながら、夫は私を起こそうと何度も名前を呼び続けていたそうです…だけど私は目覚めない…

堪らず私の(?)顔に自分の布団を掛けて寝室を飛び出し、猫を抱きかかえながら和室に閉じこもり、震えながら一夜を明かしたそうです。

「おまえは今、おまえなのか?」

話し終えて夫が聞いてきましたが、当の私は全く覚えていない状況です。
現に今も普段と何も変わらず仕事をしてますし、周りの社員の皆も普段通り接してくれてますし…。

取り敢えず、「あんたはそうやってまた遠回しに私を不細工だって言いたいのね」と言って仕事に出てきましたが、夫の話を聞いて、鏡を見るのが少し怖くなってしまいました。

今のところ、夫に風邪をひかせたぐらいの実害しかないようですが(^_^;)

本当に何かを連れてきてしまっているのなら、もっと洒落にならない状況になられても困るので、今度の休みに近所の神社やお寺に行ってみようと思います。

またまた長文投下になってしまいましたが、読んでくださった方、ありがとうございました。
最後に、こういう場合、神社に行くべきなんでしょうか?お寺に行くべきなんでしょうか?

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?316

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コメント

  1. S より:

    語り手の旦那さんが見た顔達と、田中さん&亡くなった住人の方々。
    キッチリ対応していたのでしょうか?