じいさんに聞いたな端。
6、70年ほど前、まだ道路も舗装されておらず街灯もほとんどないようなような田舎で暮らしていたとき、わき道の田んぼに人影らしきものを見つけたそうな。
案山子かと思って目もとめずに道を進むと、その黒い影がてを旗信号のようにカタカタと動かしている。
その機械的な動きに不自然を感じた子供のじいさんは急に怖くなり、それが視界に入らないようにして急ぎ足で通りすぎようとした。
すると向こうから近所の年上の子供が歩いてきた。悪ガキだったのだ。
彼にその影の事を知らせ、また先ほどの方向に目をやるとまだやっていた。
彼は、内心はどうかわからないが強気な態度でその影を観察しようとした。
こちらになにもしてこないので、その悪ガキは石を取って石を投げつけた。
当てようとしたのではなく注意をこちらに寄せようとしてのことだった。
すると影は動きをやめ、思惑通りこちらに注意を向けているようだった
すると、その影はこちらにすべるように近づいてきた。
しかし近くに来ても、それの細部はわからず黒い影のまま。
一言も発しないで異様な近づき方をするそれに、2人は感じ一目散に家へと逃げ帰った。
その晩、2人の家には奇怪な現象が起こった。
眠りにつくと、天井にもやが見えた。よくよく目を凝らすと先刻見たアレだった。
隣には両親も寝ているし、すぐ助けが呼べるため最初は早く眠りに落ちてしまおうと、目を閉じたまま恐怖に堪えていた。
寝入り寸前、ある声が聞こえた。
お経のような、聞いたこともない外国語のような、くぐもった声だった。
眠気は吹き飛び、両親の方に助けを求めようと目をやったその瞬間、目の前に顔が崩れた、かつては人であっただろうものが目の前にあった。
大声で叫んだ瞬間、その怪異は消え、再び静寂に包まれた。
しかし不思議なことに、自分でも驚くぐらいの叫び声を確かに挙げたはずなのに、隣の両親も兄弟も誰も目を覚まさず寝ていたということだ。
そのまま眠れず早く夜が明けるのを待ち、翌日、昨晩のことはだれにも口外せず悪ガキのところにいった。
すると、彼の母親が昨日帰ってからなにかおかしいんだ。今は寝こんでいる。
と戸口で応対し、そのまま会うことなく帰宅した。
夜になるのが恐ろしく、しかしなにも出来ずに部屋でぼーっとしていた。
夕方になると、客がきた。
それは、悪ガキの親戚にあたる人だった。
玄関口で母親とはなしているのを聞くと、なんとその子がなくなったそうだった。
昨日見たものの祟りに違いないと恐怖に身を縮めていたが、もうどうしようもなかった。
近所に住んでいた祖母に全てを打ち明けると、それは死神がついたのだということで、祖母がそういったものを祓える坊さんを呼んできた。
祖母も一緒に横でお経を唱えたり、なにか木の枝で体を叩かれたりした。痛いのだ。
小1時間もかかっただろうか、ずっと正座をさせられその間のことはあまり覚えてないらしい。
しかし、自分にも死が訪れるのではないかという不安は取り払えるわけもなく、死んだ子の親と自分の親が親しかったため、運良く祖母のところに預けられた。
坊さんが帰った後も祖母は片時も離れず、手を合掌させてはお祈りを繰り返していた。
そのまま祖母の傍らで朝を迎え、一応は事無きを得たような感覚を得られたが、やはり死というものはとてつもない恐怖であった。
例の坊さんに改めて会いに行き、特別のお守りを作ってもらい肌身はなさず持ったそうな
山にまつわる怖い話7