山の神様の好み

ふに落ちない話。

叔母さんの家には2人の子供がいた。
長女は、おてんば。次女は、おとなしめ。

私はおてんばな長女(従姉)と気が合っていて、夏休みなどは叔母さんの家に長期滞在していたので、ふたりとも真っ黒になって裏山で遊んでいた。
おとなしい従妹のほうは、3回に1回ぐらいだけ一緒についてきていた。

あるとき叔母さんが子供部屋にはいると、私と従姉が大人しく家の中で遊んでいた。

「今日は、山の方に行かないの?」と叔母さんが聞くと、「うん、今日は家でいいや」と、いつに無く消極的な私と従姉。
その夏はずっと叔母さんの家にいるあいだ、私と従姉は家で遊ぶか、公園で遊ぶか、近所の川で遊ぶかしていて、なぜか裏山では遊ばなかったそうだ。

不思議に思った叔母さんが「何で、山で遊ばないの?」と聞くと、私と従姉の返事がこれだったそう。

「えー、だって」「もう、いけないよね」
「ふられちゃったもんね」「しょうがないよ」

一緒に遊んでいた男の子とけんかでもしたのかと思ったそうだ。
でも、そんな事はない。
従姉と私は、いつも女の子同士だけで楽しく遊んでいた記憶しかない。
(…実は、上記の会話もこのまえ叔母さんの家に行ったときに、昔話として初めて聞いた事だった)

まあ、当人たちは特に意識する事も無く、それっきり私と従姉は裏山の奥にはいり込んで遊ぶ事は二度となかった。
うちの親や伯母さんは「中学生になったんだからすこしは落ち着いたのかな~」などと思っていたそうだけど…。

一番大人しかった従妹は、私たち3人の中では真っ先に結婚して、お婿さんが○○家に養子になり、今は二人で山やお寺の管理をしている。
その後、私と従姉も結婚したが、ずっと山とは縁のないところに住んでいる。

…もしかして、私たちおてんば組はあの山の神様にふられたってこと?
山の神様も、やはり女らしい子が好みだったということだろうか…。

山にまつわる怖い話8

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