友人に天気がわかる人がいる。
的中率何パーセントとかいうレベルではなく、ずばり当ててしまうという。
ある時日の出を拝むため山に登り、山小屋で仮眠をとっていざ目覚めてみると、外はものすごい土砂降りになっていた。
他のグループが諦めて寝直しにかかる中、彼一人外に歩き出した。
それを見た山小屋の親爺が慌てて、
「危険だから今日はやめろ、この雨は当分止まない」
と引き止めたそうだ。
絶対に晴れると確信していた彼は親爺を振り切って歩き出した。
果たして、雨はほどなく止み、頂上で日の出を拝みながら彼は持参の酒を一杯かたむけたそうだ。
ちなみに下山するとき、再び雨が降り出した。
山小屋に戻ると、親爺が「ほら見ろ、いわんこっちゃない」とあきれる声が聞こえた。
どうやら、そこでは一日中雨だったらしい。
彼は説明するのがめんどくさいので、「失敗しました」と言って笑っておいたそうだ。
その友人の話
彼が山登りをしようと計画した週に、台風が直撃したことがあった。
友人は既に諦めモードだったが、彼は絶対この雨は止む、と信じていたので、友人に計画通り荷造りしておくように電話した。
果たして当日、台風一過すばらしい青空が広がっていた。
友人は喜んだが、彼は釈然としない。感じたことのない違和感があった。
(まだ、水の気配がする。もう一雨くるのか?)
道がぬかるんでいるから、とか適当に理由をつけて彼は登山をやめさせた。
その日の夜、夕食を食べていると友人が電話をかけてきた。
今すぐテレビをつけろというので見てみると、ニュースで山が映し出された。
観光客数名が鉄砲水に飲まれて行方不明だという。
彼が登ろうとしていたまさにそのルートだった。
(この事だったのか)彼はぞっとした。
何もしらない友人は、「俺達は運がいい」と無邪気にはしゃいでいたそうだ。
さらに友人の話
百発百中の精度を持つ彼だが、その能力が全く働かなくなってしまった事がある。
それは霊峰とよばれるとある山に登った時のことで、彼は晴れると思っていたのだが、激しい夕立にやられ、あげく霧に迷ってにっちもさっちもいかなくなってしまった。
おーい、おーいと情けない声で助けを呼んでいると、男の高笑いが聞こえたそうだ。
決して不快な声ではなく、楽しんでいるような声だったという。
ほどなくして霧は晴れて、彼は無事下山できたそうだ。
その後あらためてリベンジしたが、晴れると思った天気は季節外れの雪となり、寒さに根をあげた彼はほうほうの呈で逃げ出した。
どうもその山にからかわれている気がする、と彼はぼやいている。
山にまつわる怖い話11