かからん場所と積み上げられた木

そう怖い話でもないんだが、山で間伐の仕事してたときの話。

急斜面での間伐作業で、平らになってるところがあった。
そこでチェーンソーのエンジンをかけようとしたんだけれども、いくらやってもかからない。

しばらく悪戦苦闘してると、離れたところで作業してた先輩(って言っても爺さんだが)が「おーい、そこはエンジンかからんで、横にいけ、横」と言う。
ちょっと横に動いて、斜面に出ると、エンジンが普通にかかった。

「???」とわけわからんままに作業を続けて、夕方帰るときに「その場所だとかからんってのはどうゆう意味?」って聞いてみた。

爺さんいわく

「あそこは、かからん場所なんよ。前に除伐で草刈るときにもかからんかったし、その何年か前に間伐したときにも、あそこじゃエンジンかからんかった。あそこ、山菜取りの人が落ちて転がって、骨折ったかなんかしらんであそこで死んどった。そのせいやと思う。」

ちょっとガクブルした。

ついでにもういっちょ。

これは漏れじゃなくて、今はもう引退した先輩(とは言っても、これまたすげぇ爺さんなんだが)の話。

その人と先の話の爺さん達がある現場に行ったときの話。隣の村の人からの個人の山を間伐と枝打ちをしてくれってゆう依頼でで、なんでもえらくいい値段で引き受けたらしい。
同じ仕事同じ面積で、通常100万くらいなのを、200万くらいでやってくれと言ってきた。

その仕事を頼んできた人が隣村でも有数の金持ちだったから、爺さん達そこからさらに吊り上げて250万で引き受けたらしい。
場所もなだらかな山で、除伐も必要もない。現場に行ってみて、爺さん達は「こりゃあ楽だしうまい仕事だ」って喜んだらすぃ。

作業開始の日、現場に到着して作業をはじめてから、爺さん達は妙なことに気がついた。
何年も前に間伐をした後があるのだけれども、それが入り口の部分から100メートル程の間しかされてない。
枝打ちも、そこから先がされてない。100メートルの区間は枝打ちも間伐もしてあって明るいけれども、そこから先がもう、真っ暗。

爺さん達はいぶかしんだけれども、ひとまず作業に入った。
とは言うものの、100mの区間はほとんど間伐の必要もないほどで、すぐに真っ暗な杉林の前のあたりまでたどり着いた。
と、爺さんの仲間が「おい!あそこに人が樹の下敷きになっとる!!」と叫んだ。

見てみると、真っ暗な森の中、確かに倒れた樹の下に人が下敷きになってる。
こりゃ一大事だと、近寄ろうとしたけれども、一人が「あいつおかしい」と気がついた。
樹は、その人を押しつぶしてる。
でも、樹は地面に半ばめりこんでる腐った倒れた木。
しかも、その人は無表情でじっと爺さん達のほうを見てる。真っ白な無表情な顔で。
ありえない。

爺さん達、もうチェーンソーも何もかもほったらかしにして、その場から逃げ出したそうな。
んで、その金持ちの人のところに言って「変なもんがおった!」というと、「あ、あんたらもダメか」とのそっけない返事。

なんでも、隣村の森林組合に仕事を頼んだらしんだけれども、そのときにその場所で中年の作業員が樹の下敷きになって死んだらしい。
それ以来、そこに仕事に行くとはそいつを見るとのことで、隣村の森林組合、および山の仕事してる会社、そうゆうのは一切引き受けてくれなくなったとかなんとか。

んでもって、近隣の村の森林組合とかにも頼んだらしいんだけれども、どこもそこも作業開始の日に「やっぱ無理」と断ってくる。
んで、うちの村の連中に話が回ってきたと。

何より恐ろしいのは、爺さん達が実物を見て、その話を聞いて、それでも怖がるどころか金ほしさにその仕事続けたこと。

二日目にもそれがいたそうなんだけれども、爺さん達、そいつの上にでっけえ樹何本も切り倒して、封印(?)しちゃったとかなんとか。
(その樹切る間も、そいつはじーっと真っ白な無表情な顔で爺さんたち見てたらしい)

この話を聞いたのは、漏れがその山に行って、草刈してたときに不自然な形で積み上げられてる(てゆうか、いろんな方向から切り倒された樹がそのまんま何重にも積み重なってる)のを見たのを、飲み会のときに「あれはなんであんなことをしてるのか?」って聞いたとき。

・・・・ちゅうか、そんな場所に一人で草刈に行かせるな。

山にまつわる怖い話14

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