奥からの声

この体験をしたのは2年くらい前だったと思います。

私の地元はかなり田舎で、実家は携帯の電波の届かないような場所にあり、コンビ二まで車で20分ほどかかります。
その日はハトコのKと私の家で遊んでいました。
深夜になりKがタバコがなくなったと言い出したので、めんどくさいと文句を言いつつ買いに行くことになりました。

家から10分くらい車を走らせたところでKが「いま煙草屋さんがあったよ。コンビニは遠いからそこで買おう」といいました。

その煙草屋さんは夕方から朝まで開いている煙草屋さんで、珍しい煙草も多く見ているのは楽しいのですがのですが、店主のおじさんの営業トークがとても長いので私は気乗りしなかったのですが、Kに押し切られる形でそのお店で買うことに。

「このタバコ新作ですよ」
「この煙管は管の部分が長くて…」

そんな話を15分くらい聞いてうんざりしはじめたころ「あ…い…あつ…い…たすけて…たすけて…」というおばあさんの呻き声が店の奥から聞こえ始めました。
最初は心霊現象かと思ったのですが、霊感なんて全然ないと豪語するKにもそれは聞こえているらしく、しきりに店の奥に視線を泳がせていました。

でも店主さんは全然気にしてない様子。
その後も15分近く色々な煙草を勧めてきて帰るに帰れない。

営業トークにも呻き声から悲鳴に変わった声にも我慢できなくなった頃、意を決したKが「おばあさんの声しませんか?大丈夫なんですか?」と聞きました。
そしらた「え、なんのことですか?」といって笑った店主さんの顔が今でも忘れられません。

それから追い出されるように店を出てからの帰り道、虐待なのか、幽霊なのかさんざん論議したけど怖くてまたその店に行く勇気もなく警察に通報してもなんて説明したらいいかも分からず、家に帰って両親にその話を相談して寝ました。

それでそのまま次の日には忘れてたんですよ、そのこと。

その一週間その家が火事になって、店主さんとそのお母さんが焼死体で発見されたって聞くまでは。

どうやら自殺らしいです。
痴呆症の母親の介護と貧乏に疲れての。
目撃した人の話によると店主さんは火傷を負いつつも一度家の外に出てきたのに「お袋がまだ中に居るんだ」っていってまた火の中に飛び込んだらしいです。

私とKが聴いたのは虐待中の悲鳴だったのか、それとも幻聴だったのか。

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?279

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする