髪を引っ張るおばあさん

私の母方の伯母が体験した話。

今から15年程前、家に遊びに来ていた伯母と夕食の後、お茶を飲んでいたときのこと。
梅雨時で天気の悪い日が続き、洗濯物が乾かない、鬱陶しくてやだわ、などとたわいもない会話をしていた。

「そうそう、昨日の夜、雨が凄かったねー」
母が話題を振ると、伯母が急に大声で、
「そう!雨!思い出したわ、昨日の夜中にね・・・。」
と身振り手振りで話し始めた。

夜、自分の部屋で缶チューハイを飲みつつ、TVを観ていたらいつの間にか眠ってしまった。
ふと目を覚ますと午前1時を回っていた。
「あーベッドで寝なきゃ・・・」
起きあがりベッドに入ると雨戸を叩く雨の音がする。
「雨強いみたいだな・・・」

そのままうとうとと眠りに入り、夢を見た。
魔法使いのお婆さんのような顔の人が、伯母の髪の毛を引っ張る。
「痛いからやめてください!」
と怒鳴ると、目が覚めた。

・・・筈なのに、目の前には夢の中に出てきたお婆さんが伯母の顔をのぞき込んでいる。
一瞬何がなんだかわからずに目をこすると、誰もいない。

「何だったんだ???」
呆然とした伯母は、気付いた。

「・・・雨戸が開いてる」
雨戸どころか窓も開いており、そこから雨風が吹き込んできて、伯母もベッドも濡れている。

ちゃんと閉めた筈なのに、なんで?
ここは2階で上ってこれるような足場もない。
それより夢に出てきたあの妙なお婆さん、・・・雨戸開けて入ってきたのかしら・・・???

「えー、それ夢でしょ?寝ぼけてただけだよ!それにお酒飲んでたんでしょ~、酔っぱらってたんだよ!」」
話を聞いて恐くなった私はそう否定してみたが、真剣に話す伯母の顔に冗談のかけらもないので、そのまま黙ってしまった。

「それが夢じゃないみたい。夢で髪の毛引っ張られたって思ったけど、ホントに引っ張られてたみたい、一部分すっごい抜けてたの。」

先日伯母に会ったので、この話を覚えているか訊いたら、
「あ~もうアレ夢だって事にしたわ~。恐いもん」
と言っていた。

不可解な体験、謎な話~enigma~ 10

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