たぶん中国の話。
旅の男が山中の大樹の下で夜を明かしていると木陰から白磁のように美しい肌を持つ、裸の娘が現れ男を誘った。
誘われるままに体を重ねると、娘の白い肌はまるでヒルのように男を張り付き、剥がそうとするとひどく痛む。
その上、男が幾度も精を放っても娘は満足せずそれどころかますます貪欲に求めてくる。
男は意識が無くなるまで娘と交わり続けた。
翌朝、目を覚ました男が見たものは、昨夜までは蕾も付けていなかった桜の大樹が満開の花を咲かせる光景であった。
男は精魂絞り尽くされ立ち上がることもままならなかったが、また娘が現れたら、今度こそ命まで吸い取られると思い、這いずるように山を降りたという。
麓の村まで辿り着いた男は、村人に昨夜の事を話すと、皆、怖がるどころか逆に歓喜に沸き返り、また男を褒め称えた。
事情のわからない男に、村の長が説明する。
「おまえが出会った娘は山の神だ。神は男の精気を糧に花をつけ、その礼のように山河を豊かにしてくれるのだ。だが今年は戦で元気な男衆を取られてしまって困っていたのだ。」
男は厚く持て成され、後に村の娘と所帯を持ったが、神に絞り尽くされてしまったのか、遂に子種には恵まれなかったという。
山にまつわる怖い話23