放置別荘

俺は別荘地の見回りもかねてイングリッシュセッターのコールと散歩を毎日している。
かなりの数ある別荘の中でもなんか嫌だな、気持ち悪いなと思う家が数件あった。
その中でも一番の不気味なのが中腹にある2階建ての家だった。
その家は概観も荒れていて手入れされていないうえに、窓ガラスも汚くなにか通るたびに嫌だと感じていた。

ある日、いつものようにその家を通るとドスッ!!と壁を叩くような音が2階から聞こえた。
ウワッと思い俺は立ち止って耳を済ませていると、ズッ。。。ズッ。。。となにか音がかすかに聞こえてきた。
犬のコールをみるとやはり音のする2階の壁をじーーっと見つめている。
すこしたつと音は聞こえなくなったので俺は近道して家に帰った。

次の日もその家の前で異変は続いた。
同じように家の前を通りかかったとき、カツ。。とガラスを爪ではじいたような音が聞こえた、ふっとその窓を見ると汚いガラス越しにカーテンがゆれていた。。

不気味なのは確かだが俺は昨日の音もこいつが原因かぁ、と思い安心した。
別荘地では良くあることで、鳥や小動物が侵入して中を荒らしていることが良くある。
キツツキに入られた家はそれこそ悲惨なものになる。
今回は野鳥だと思い○○番の家に鳥が入ってるようだよと、父に報告することにした。

家に帰って父にそのことを言うと、○○番の家か。。ここ数年は来ていないからなぁ。
俺は○○番の人はどんな人なの?と聞いてみた。

どうやら築10年くらいでここら辺の別荘地のなかでも目立つほど豪華な作りの別荘で、立ててから1、2年はかなり頻繁に来ていたが、3年目あたり、7年前からぱたりとこなくなり家も荒れ放題だという、
しっかりと手入れをすればかなりきれいな家で、今でもすぐ買い手がつくほどいい家と立地なのだそうだ。
なので、もう来ないのなら今のうちに売ればいいのに父は言っていた。

その話を聞いてよくよくその家を見てみるとつくりは言われたとおりいい作りだった、
もったいないなぁと思いながらまたその家の前を通っていると、カチッ!!とまた音が聞こえた。
前と同じように窓をはじく音だ、カーテンも揺れていた。

鳥が出たがってるんだろうと思ったが地主といえども許可なしに人の家にあがりこむわけも行かないし。。
と思っていると、ズッ。。。ズッ。。。と前聞いた音がまた聞こえてきた。
なにかこすれる音だが、外まで聞こえるほど強いのでなにかを引きずる音に思えた。
それは2階の窓から聞こえているが移動している。。。ドス!!!かなり大きな音で壁にぶつかる音。
そしズッ。。。ズッ。。。。。。ズッ。。ドス!!!。。。鳥じゃないのは確か。
しかもその音は俺が歩く壁に合わせていどうしてきてるようだった。

すぐさまオヤジに報告すると、いい機会だから○○番の人に電話してみるか、といって連絡をした、まず連絡網に登録されている電話番号に電話すると、この番号は現在使われておりませんというおなじみの声、なので緊急連絡先に電話してみると、携帯に転送された音が聞こえてからしばらくして男が出た。

話によると、その別荘の持ち主の息子らしい、親父が音のことを伝え、なにか生き物が入り込んでいるので近いうち来る予定とかありませんか?と聞いてみると、その息子は、父も家族も、もうあの別荘には行くことはないだろうといった。
そして別荘は取り壊し、売るつもりだといった。

取り壊しにかかる費用を考えると、取り壊さずにそのまま売ったほうが損をしないとオヤジが教えたが、その男はとりあえずあの家は壊すことになっていると言い張り、近いうちに業者に壊させるということを伝えて電話を切った。

家族で話し合ったがやはり少しおかしい。
俺はその日以来その家の前を通らないようにした。

その一ヵ月後、解体工事が行われることとなった、その解体を依頼された地元の解体業者からうちに、ちょっと来てくれという連絡が入った。
さっそく言って話を聞くと、中が異様な状況なのでどうしようかと相談された。

不審に思い中を確認してみると壁という壁がどす黒く汚れていて天井までなにかの跡がぺたぺたついていた。
さすがに7年放置された家でもここまであれることはまずない。
だが不思議なことに生活感がある、ちょっと言葉ではいいずらい状況なのだが、壁が異様な汚れ方をしているという以外は人が生活していたような痕跡がある、しかもつい最近まで。

なにかデジャブや白昼夢をみているような違和感のある空間。
どす黒い汚れだった1階とは違い2階は壁紙がはがれ柱や床が傷だらけ、あの異様な音が聞こえた窓の下の床はおおきくくぼんでいて、今にも床がはずれそうな状況だった。

結局、その家に関しては解体業者と家主との間でおりあいがつかず今もそのまま、壊されずに残っている。
変な噂がたつことを恐れた親父はその解体業者の家の中を見た人たちに噂を広めないように堅く言ったらしいが。
いろいろあの家の周辺の家主からは変な音が聞こえると苦情が来るが、そのたびオヤジは動物が入り込んでるんだといってやり過ごしている。

時今もその家を通りかかるが、今では窓ガラスは染みに覆われて中が見えない状況になっている。
周りの土地もあまり買い手がつかず近所の人も家を手放したりしてしまい、その家の周辺は、明るいうちにいっても不気味な雰囲気になってしまっている。

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?254

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