何年か前のことですが、もう直ぐ夏も本番というちょうど今時分、私は仕事をしながらラヂオを聞いていました。
昼少し前、午前11時ごろの番組で「怖い話特集」みたいなことがはじまり、耳をそばだてて聞いていたのです。
番組のパーソナリティ?が、怖い話ありませんかと呼びかけて、それを聞いた聴取者が電話でネタを話す、という趣向でした。
その時仕事場には私一人だけでしたが、天気のよい真昼間のこと、面白く聞いていたんです。
パーソナリティ(以下パ)
「もしもしこんにちは」
リスナー(以下リ)
「こんにちは」
パ「どちらからですか?」
リ「石狩の主婦です」「いつも聞いています」
パ「どうもありがとうございます。えー・・どんな話ですか?」
リ「私の家、海の直ぐ近くなんですけど、あのー、いまいるんです。その・・立ってるんです。海の上に。海面の上に。」
パ「え?もしもし立ってるって・・人が?・・海の水の上に?」
リ「そうです・・えーと何人も。」
パ「え?えー?な何人も?い今?」
リ「そうです・・こっち見てます・・。」
パ「・・見てるって・・こっち見てる人がいるの?」
リ「みんなです。・・全員こっち見てるんです。」
その人はそういったものをしょっちゅう見るので引っ越したいという話を淡々と語って電話を切り、番組はCMに入りました。
頭の中にその異様な、まがまがしい光景が浮かび上がって離れず、仕事場に他の人が出勤してくるまで私はずっと外にいて、まったく仕事になりませんでした。
もう、一人のときはそんなの聞きません!
ほんのりと怖い話6