子供にしか見えない子供

俺の親父の実家は東北の旧家で、だだっ広い家だった。
祖父は既に亡く、祖母が一人でその家に住んでいた。
小学生の頃は、毎年夏休みになると、数週間泊まりに行ってのだが、その家には俺と弟にしか見えない子供がいた。

そいつは、普段使わない部屋の扉を開けると中から飛び出してきたり、夜、トイレに起きて寝床に戻ってくると俺の布団に入ってたりして俺や弟を驚かせて楽しんでいるようだった。

祖母にそのことを言うと、「死んだおじいさんも子供の頃ころ見たって言ってたし、おまえのお父さんも子供の頃は見えるって言ってたね」と言われた。
その、子供のころ見たと言う親父に聞くと「あー、子供の頃は見えてたな、中学に入ったころから見えなくなった。あいつ顔が怖いんだよな歌舞伎の隈取みたいで」と言われた。

どうやら、親父が見た子供と俺がみたのは同じもののようだった。
俺が親父に話していなかった、あの子供の特徴を言っていたからだ。
あの子供は、歌舞伎の隈取のように、顔中に血管のようなものが浮かび上がているのだ。
おそらく祖父が見ていたのも同じ子供だろう。

中学に入ってから、部活や勉強で、あの家に泊まりに行くことは無くなった。
去年、祖母の葬式に行ったときには見ることはなかった。
そして、誰も住まなくなったあの家は取り壊された。
あの子供はどうなったかは分からない。

ほんのりと怖い話8

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