彼は時々、親戚の手伝いで実家の山に籠もるのだそうだ。
叔父さんと二人、テントで寝ていたある夜のこと。
キョッキョッキョッと、鳥の鳴き声が聞こえてきた。
こんな真夜中に鳴く鳥がいるのかと不思議に思い、傍に居る叔父さんに聞いてみた。
ホトトギスだという。
なるほど、鳴き声が“特許許可局”と聞こえなくもないな。
どこかで読んだ知識を思い出し、彼が感心していると、叔父さんはこうも言った。
「あまりしっかりと聞くんじゃないぞ。他の山は知らないが、この山じゃぁ夜に鳴くのはホトトギスだけではないんだ」
キョッキョという声に混じって、偶に別の物がボソリと聞こえることがあるのだと。
それは人の名前らしい。夜の山で名前が呼ばれた者は、近い内に死ぬのだとも。
「里の爺様にゃ、ホトトギスに混じって鬼が哭くって聞いたな。ま、単なる言い伝えだがな。実際、儂は聞いたことがないし」
夜の森に響くホトトギスの声を聞きながら、彼は碌に眠れなかったという。
山にまつわる怖い話32