ある医者の話
老人が同僚に付き添われ、病院を訪れた。
山で動物に噛まれたという。
中指の先端が切れた程度だが、手首まで真っ赤だった。
彼が見ているその目の前で、腫れは秒単位で、みるみる肩の方まで広がっていく。
(なんだ、これは・・・)
何に噛まれたのか尋ねたが、老人も同僚も、よく見えなかったと言った。
容態はたちまち悪くなり、老人はその日の夕方、絶命した。
死体は赤達磨の様に、全身膨れ上がった。
家族が号泣するなか、同僚たちは黙ってその死体を運んでいったという。
山にまつわる怖い話34