かなり以前のこと。
当時勤めていた職場に、Aさんという人がいた。
Aさんは、自分の席の横の窓から飛び降り自殺した人がいることを、半ば自慢にしていた。
新入社員や営業さんがやってくると、わざわざ窓枠に残っている足跡を見せて、「これがこの人のこの世での最後の足跡なんだよ」とか、「僕が部屋を出るときすれ違ったから、僕がこの世で最後に出会った人間なんだな」とか言っていた。
足跡は、雨にあたらない所にあったせいか、長い間残っていた。
ある時、大掃除があって、その話を知らないアルバイトの女の子が窓枠をきれいに拭いてしまった。
Aさんはすごく不機嫌になり、女の子をネチネチいじめていたが、ある時から何も言わなくなった。
窓枠に再びホコリがたまり始めたら、あの足跡が現れたからだ。
Aさんの自慢話はぴたりと止まった。
219 :
>>218
例えばゴム底靴だとしたら、全体重をかけて踏むと表面のゴムが窓枠にコーティングされて、掃除すると肉眼では見えなくなるが、時間が経つとホコリがそこに吸い寄せられて足跡が現れる・・・
という解釈が成り立つな。
まあ、靴と窓枠の材質にもよるが。
234 :
>>219
そうだと思う。ゴム靴の跡が金属の庇みたいな部分にくっきり残っていたから。
Aさんは、「どうして跡が残ったと思う?脂性の人だったから、脂が残ったんだよ!」なんていうネタにしてたけど。
ひとつ思い出したことがある。
その、自殺した場所の窓からは、すごくきれいな夜景が見えた。
夕方から夜にかけては、少しづつ灯っていく家の灯りがとてもきれいだった。私はその夜景が好きだったから、「こんな夜景を見ていたら、死ぬ気も無くなるんじゃないかな」とか言ってた。
それを聞いたAさんとは別の上司が、「これだけある灯りの、どれひとつも自分の帰る所はないし、受け入れてくれる場所もないと考えてみろ」と。
その頃はそんなもんかなと思っただけだが、時間が経って、だんだんわかってきたような気がする。
ほんのりと怖い話17