同級生の話。
彼女が学生時代、登山大会に参加した折のことだ。
キャンプ場のトイレに行くと、一つしかない個室の前には行列が出来ていた。
大人しく並んでみたが、一向に前に進む気配がない。
ドアのすぐ前に立っている子が何度もノックしてみても、その度に同じ強さでトントンと中から返ってくる。
一体いつまで入ってるのよ!? と何人かが怒りの声を上げ始めた頃。
丁度通り掛かった者が行列を見て「何してんの?」と尋ねてきた。
他校の最上級生だったらしい。
事情を一通り聞いたその上級生は「誰か居るの?」と中に声を掛けた。
返事はない。
やれやれと言った感じで、おもむろに上級生はドアを引き開けた。
順番待ちをしていた皆の目が点になる。
トイレの中には誰も居なかったのだ。
「ここのキャンプ場、っていうかここの女子トイレには、昔から“コダマさん”ってのが居るのよ。ノックの音を真似してくれる輩だけどね。ノックがいつまでも返ってくるようなら、直接声を掛けて確認なさい。 コダマさん、どうしてか人の声は真似出来ないみたいだから」
随分と質が悪い怪だよねぇ。よりによって女子トイレだけに出るなんてさ。
そう彼女はプリプリ怒っていた。
山にまつわる怖い話27