受話器の向こう側

小学生の頃、母親から電話がかかってきたある日の事。

内容は『今から帰るけど、仕事場から出たところだから1時間ぐらいかかるよ、ご飯モスバーガー買ったから』みたいな感じの事。
俺は『分かった、あ、モスチキン買った?』と聞いたと思う。
母は『うん、買ったよ。持って帰るね』と、まあ普通の会話をしてた。

そんな感じで電話で話してて1~2分たったくらいだったかな?
突然ガチャ、と家のドアが開いた。姉ちゃんが塾から帰ってきたのかな?
と思って電話の母に『ちょっと待ってて!』と、返事を待たずに受話器を置いて玄関に行った。

玄関には母がいた・・・

え?1時間かかるんじゃないの?俺との電話は?
一瞬何が何だかわからなくなり、とりあえず母に『電話は?』と聞いても『は?何が?』と。
まるで電話なんてしてなかったみたいな、きょとんとした顔の母。
そこで受話器を置きっぱなしにしてた事を思い出し、親機の所まで戻って受話器を耳に当てた。

電話の向こうから聞こえてきたのは、『もしもし?』という紛れも無い母の声。
うあ、と叫んで受話器を叩きつけた。

その日のご飯がモスバーガーなんかじゃなく、ほか弁だったのを覚えてる。
母に『モスは?』って聞いたら『そんな事聞いてないよー。また今度ね』と言われたのも覚えている。

今まで生きてきた中で一番意味が分からなかった体験です。
もし受話器の向こうの母親が本物で、今いる母親が偽者だったらどうしよう・・・

ほんのりと怖い話24

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