3m近くある大男

戦後すぐの話

山へ薪拾いに行った男が、思うような量が集まらないので森の奥へ奥へと進むと、ぽっかりと開けた場所に出た。
中央には子供の背丈ほどもある石の棚があったので、そこによじ登って弁当を食べようとすると、森の奥から何やら草をかき分ける音がする。

音の方向を見ると、3m近くある大男が現れた。
毛皮を纏った大男の顔を見ると、額に大きな一つ目。

男が驚いていると、大男は「煙草があったらくれんか?」と問いかけてきた。
恐る恐る1本渡すと「紙巻きとはハイカラな」と言い、腰のほくち箱で火をつける。

隣に座り一服する大男に、つい好奇心から「どこから来たのか」と問いかけると
「お前たちが足を踏み入ることもない森の奥から来た、久々に遠出をしてしもた」と笑った。 
2時間程取り留めのない話をした後、お互い別々の方向に別れた。

「あれから何度も山に登ったが、それから一度も大男にはあわなんだ」
今年で90歳になる老人はそう言って話を終えた。

山にまつわる怖い話51

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