よるのおじいさん

ある一家がキャンプに行ったんだと、いや俺の叔母一家なんだがね。
今みたいに便利な道具が簡単に揃うわけでもないし、夜はそりゃぁ早く、そりゃぁ暗かったろうな。
夕食を食べて、星を眺め、隣のテントの大学生と一緒に酒飲みながら歓談したりして夜は更けていく。
と、そこに当時小学3年生ぐらいだった甥っ子が来て、一言。

「よるのおじいさんがきてる」
泣いてたり笑ってたりしてたわけでもなし、眠そうではあったが、まるで隣の人が訪ねてきたと報告してるよう。
だもんで、普通に近くのテントの人か、キャンプ場の人が来てるのかと思い、叔母が「どこに?」と尋ねると。

「あっち」
甥っ子が指さした方は藪、その後ろには森。誰も居ないし何もない。
いや違う、たき火でからはすした目が闇になれてくると、なにか黒いのが居る。

何あれ。と、隣の旦那に語りかける。何事かと大学生のグループも目を向ける。
全員闇に目が慣れてくる。と、なんだあれ? 熊か? いや細い、という呟きあい。
やがて全員の目の前で、スゥっ、と。溶けるように。ではなく、森に入っていくように、消えた。

そして全員無言。
しばらくして旦那さんがポツリと漏らした。

「まぁ……山だからな」
という言葉に、全員なんとなく納得したそうな。

山にまつわる怖い話51

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